『-one-』

子供なココロ大人なカラダ P1


「キャァー!嫌ーっ!こっち来ないでぇ!」

 麻衣は必死に走って逃げている。

 その後ろをすごい形相をした獣が追い掛けて来る。

 足がもつれながらも一歩でも遠く一秒でも早く逃げようとしているのに足元の小さな石に躓いて転んだ。

 立ち上がれずにいる麻衣に獣はジリジリと間合いを詰めて後ずさりしながら逃げる麻衣に飛び掛かり押さえつけるように覆いかぶさった。

 目の前の獣が大きな口を開けて食べようとした瞬間、麻衣は恐怖で目を閉じ心の中で大好きなあの人の名前を叫ぼうとした。

 が…、想像していた衝撃とは違う衝撃が麻衣の体を襲った。

 あ…ちょ、ちょっと…これって…

 獣の大きな舌がいつの間にか裸になっている麻衣の体をその大きな舌からは想像出来ない繊細な動きで舐め回している。

「んっ…あぁ…いやぁん…そこは…」

 生暖かい獣の舌が麻衣の弱い所ばかりを責め麻衣の中は蕩けてしまいそうになっている。

「あぁん…だめぇ…」

「ダメ?そんなに気持ち良さそうな声出されたら止められないよ?」

 ん…ん?

 あれ…この獣ってば普通に人の言葉話せるの?

「やらしいなぁ…眠っているのにこんなに感じるなんて」

 耳元でボソボソと囁く声。

 耳をペロッと舐め上げた舌はそのまま耳の奥へ入ろうする。

 耳の中でクチュクチュと音がして思わず熱い息が口からこぼれた。

「はぁ…ん」

 伸ばした手には暖かくすべすべした肌。

 自分の体にも温かい肌が密着している事に気付きようやく目を開けた。

「麻ー衣。ただいまあーんどおはよ!」

 シャワー浴びたばかりの体は少し火照って濡れた髪からは雫が落ちそうになっている。

 その姿はまるで雑誌の中から飛び出したアイドルのよう。

 ようやくはっきりしてきた視界で辺りを確認して枕元の時計に手をやって時間を確認する。

 4時半を少し過ぎた…とこ。

 ドサッ−

 陸は上に覆いかぶさった体を力いっぱい押し返した。

 油断していた陸は麻衣の隣へと仰向けに転がった。

「麻衣ってば朝から元気すぎっ!」

 麻衣の気持ちも知らずに上半身を起こす陸はニコニコ笑って麻衣の頬を撫でている。

「ただいまのキス」

 チュッと軽く唇に触れるキス。

「それとおはようのキス」

 今度もチュッチュッと軽く触れるだけのキスをして満足そうに微笑む。

 一体何時だと思ってるの?とさっきまで怒鳴る気だった麻衣もこんな嬉しそうな笑顔を見せられては何も言えなくなってしまった。
 
「お帰りなさい」

 麻衣は手を伸ばして陸の頬を撫でる。

 陸はその手を取ると手の平にもキスをした。


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