『-one-』

引越しパーティ P4


「俺、陸さんも麻衣さんもすごい好きで、だから何ていうか…これからもずっと仲良くしたいって」

 悠斗くん…。

 いつも悠斗くんは陸を慕ってくれていてそれが陸も私もすごく嬉しかった。

「だから麻衣さんの事諦められます。仲のいい二人でいて欲しいし俺二人に嫌われたくないんで…」

「悠斗くん…」

「普通にメールして下さい!愚痴とかのろけとかでも大歓迎っすから!」

 一生懸命笑顔を作ってくれてるのが伝わって来て胸の奥が苦しくなる。

「もちろん!これからもずっと仲良くしていこうね」」

「麻衣さん…」

 大股で私に近寄るとふわっと大きな腕の中に包まれた。

「最後に…少しだけ…このままで」

 麻衣は大人しく悠斗の腕に抱かれた。

「麻衣さん…悠斗って呼んでくれませんか?」

 なんて切ない声なんだろう。

 手も声も震えているのが伝わってくる。

「悠斗…」

「キス…したい…です」

 その言葉に戸惑ってしまったけど黙ったまま顔を上げて目を閉じた。

 優しく唇が触れてそのまま時間が流れた。

「麻衣…ありがと」

 最後にギュッと力を入れて抱きしめるとパッと離れて笑顔になった。

「じゃあ、これ向こう持って行きますよ!」

 具でいっぱいになった土鍋を持ってリビングへと歩いて行った。

 これで良かったのかな?

 悠斗くんの気持ちはずっと知っていたけどどうする事も出来ずにいた。

 ごめんね悠斗くん。

 好きになってくれてありがとう。

「…麻衣」

 キッチンの入り口に陸が立っていた。

「あ…ごめんすぐ用意するね」

 入ってくると私の手を握って横に並んだ。

「悠斗の事…ありがとう。これで気持ちに整理つけられると思う」

「陸…見てたの?」

 ギュッと手を握り締めて何も言わなかった。

「俺さ、悠斗の事弟みたいに思ってるから…」

 私もその手を握り返した。

「私も悠斗くん弟みたいに可愛いから…」

 陸は麻衣の頭を優しく抱き寄せると自分の胸に優しく押し付けるようにして抱きしめた。

「ありがと」

 涙が出そうになって震えた声で呟く麻衣の背中をポンポンと慰める様に陸が優しく撫でている。
「あのぉ…そう言う事は俺らが帰った後にして下さいよぉ〜」

 キッチンの入り口にもたれるように悠斗が立ち苦笑いを浮かべている。

「あ…やだ…もぅ!」

 麻衣は慌てて陸の体を突き飛ばした。

「いってぇ!悠斗お前さぁ少しは気使えって!」

「これでも十分使ってるのにひどいですよぉ!」

 二人はじゃれ合いながらリビングへ戻って行った。

 結局その日の大宴会は明け方まで続いて…次の日麻衣は会社を休むはめに。

end

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