『-one-』

田口家へようこそ! P1


 クリスマスも過ぎ街も慌しくなって来た頃休みを取った俺は麻衣と二人で家の前で立っていた。

 初めて来る麻衣の実家だった。

「ほら、入ろ?」

 麻衣が俺の腕を引っ張る。

「ちょ、ちょっと待って!」

 ふーーーっ

「ねー、それ何回目?」

 大きく深呼吸をする俺を麻衣は笑うけど誰でも緊張するだろ、普通…。

「大丈夫だって」

 今日は麻衣の両親に挨拶に来た。

 挨拶だけでもしろって樹さんがわざわざ電話をかけてきたのが誕生日の数日後だった。

「陸がホストだって知ってるから気にしないで」

 俺に構う事なくスタスタと中へ入っていく。

「ただいまー」

 もう玄関の中に入っている麻衣を慌てて追いかける。

「お母ちゃーん、連れてきたよー」

 中からパタパタと走る音がして現れたのは麻衣のお母さん。

 想像していたより若くてしかも麻衣にそっくりだ…。

「おかえりー、結構早く着いたね!」

「道空いてたもん。あ、この人だよ」

 二人は同時に振り返って俺を見た。

「あ、中塚陸です」

 挨拶して頭を下げるとお義母さんは上から下まで見ている。

 やべ…このスーツおかしいか?

 でもまともに見えるのってこれくらいしかないんだけど…。

「思ったより甘い顔してるね?」

「そぉ?」

「麻衣はもっと…こう目で殺すようなタイプが好みかと思ってたわ」

 な、何の話?

 二人の会話が理解出来ない。

「仕事だと違うんだよ?」

 また二人同時に俺の事を見た。

 な、何だよこの空気…何の会話をしてるわけ?

 客商売してるから人に見られるのは慣れてるけどこれはなんか違う気がする。

「こんな所でもなんだしー入ってー」

 お義母さんはスキップをしながら中へ戻って行った。

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