『-one-』

サンタが僕等の店にやってくる P1


 煌くイルミネーション
 流れるクリスマスソング

 そんな一年で一番華やぐこの時期はやはりここCLUB ONEの扉を開ければ一年で一番の華やかな時間がある。

 大きなクリスマスツリー
 軽快なテンポのクリスマスソング
 弾けるシャンパンの泡
 着飾ったホスト達

 その中でも一際輝き熱い視線を浴びている男がフロアの中央にあるツリーの前に立っている。

 彼の前には綺麗に積み上げられたグラスそして隣には贈り主の女性が立ち肩に手を廻している。

「綺麗なツリーをありがとう。今夜もとても綺麗ですね」

「陸が喜ぶ顔が見たいのよ。でも今夜は独り占めは無理そうねぇ」

「でも今は俺の横に立てるのは百合さんだけだ。だから俺の事だけ考えてて…」

 陸が耳元で囁くと嬉しそうに笑って周りに見せ付けるように陸の体に寄り添うと陸に促されてシャンパンのボトルに手を添える。

 全てのグラスにシャンパンが行き渡るまで惜しげもなく注がれるその光景に思わずその場にいた者はため息を漏らした。

「メリークリスマス、百合さん」

 陸は用意した花束を差し出した。

「えっ…?」

 突然の出来事に戸惑いながらも大輪のカサブランカの花束を受取ると陸は腰を屈めて頬にキスをした。

 羨ましそうな悲鳴があがる。

 陸から彼のお客様だけへのサプライズプレゼントはそれぞれのイメージで選んだ花束とキス。

 そんな細かな気配りこそがNo.1ホストと呼ばれる所以だ。

 ホストも客もクリスマスというイベントに酔いしれていた。

 そんな華やかな店の隅でオーナーの誠は時計を見てニヤリと笑った。

「そろそろ、サンタが来る頃か」

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