『-one-』
お見合い!? P1:side陸
「絶対に怒らないって約束して」
来たそうそう大事な話があるのって切り出された。
まさか別れ話か?と思って確認したけどそうじゃないらしい。
でもさっきからこの前置きばかりで話が進まない。
「だから、何の話?」
「絶対に怒らないって約束できる?」
(一体何なんだ?)
かなり真剣な表情に渋々頷くしかなかった。。
「私、今度の日曜日…お見合いしないと…」
「何だよそれ!意味分かんねぇ!」
「もー怒らないって約束したでしょ?」
(は?)
自分の聞き間違いかと思った。
怒るとか怒らないとかそういう次元の話なんかじゃない。
見合いって、見合いって、見合いって結婚したいって事だろ?
「見合いってどう言う事?絶対に行かせねぇ!ってゆーか、何で見合いするの?意味分かんねーって」
(あーくそっ…何でだよ!)
苛立つ気持ちを抑えられずに近くにあったクッションを掴むと力いっぱい投げつけた。
「俺がホストだからか?俺はホストだから結婚はしたくないのか!?」
「あーもぅ、話は最後まで聞いてよ」
麻衣が俺の前に座って手を握った。
俺の目を真剣な表情で覗き込まれたって今回だけは簡単には許せない。
「取引先の社長の知り合いの人の息子さんで、うちの社長もどうしても断れなくて…。私だって彼がいるから無理ですって言ったんだよ?」
だからって見合いしてもいいと思ってるの?
「会うだけだから!ね?」
(会うだけ?会うだけ?)
麻衣のセリフに怒りも臨界点を突破した。
「麻衣は俺の気持ち少しでも考えてるっ!?」
「り、陸…」
「麻衣は俺の気持ち分かってんのにヤキモチ妬かせて楽しい?」
ダメだ…。
「違うよ…そうじゃないって」
「じゃあ何だよ、ホストの俺とは結婚出来ないから結婚相手探しに行くのかっ!?」
感情が抑えられない。
「そんな事言ってないってば…」
「じゃあ何で見合いなんかすんだよっ!」
麻衣の顔が今にも泣きそうに歪んでいる。
そんな顔をさせたいわけじゃないのにどうしても気持ちが抑えきれない。
「社長の頼みだし、会うだけならって…」
いつかは麻衣と結婚したいって思ってる。
麻衣もそれを分かってくれてると思ってたのに。
「そんな会社辞めろよ!」
「陸っ!」
「無理矢理見合いさせるような会社辞めちまえよっ!」
「そんな事言わないで…」
麻衣の目から涙がポロポロ零れ落ちるのを見て少し胸が痛んだ。
だけど、麻衣…?俺だって泣きたいぐらい悲しいんだよ。
「見合い断って来いよ」
涙を見て少し冷静になったのに…。
頬を伝う涙を指で拭ってやると麻衣は首を横に振った。
「社長に迷惑かけちゃう…」
何だよそれ…。
俺って麻衣の何だよ…社長以下ってことかよ。
「おまえ社長の女?」
「え?何?何言ってるの?」
「だってそうだろ?俺の事傷つけても平気だけど、社長に迷惑かけられないんだろ?」
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