『-one-』

Let's Drive P1


「私も車の運転をする!」

 それはある土曜日の事。

 昼頃起きた俺に向かって声高らかに宣言した。

「は?免許持ってんの?」

 どうもその一言が気に食わなかったらしい。

 パタパタと走って行くと何かを持って戻って来た。

「ジャーン!」

 効果音付きで突き出したのは…ゴールド免許だった。

「ほんとだ。何で車乗ってないの?」

「え?あ…んー必要なかったから?」

 この時もっと注意深く見ていれば気付いたはず。

 麻衣の目が泳いでいた事。

 そうすればあんな事には…。

 そんなわけで早速運転させてみる。

「ね…いきなり?」

 運転席に座った麻衣はまま動かない。

「いきなりって…じゃあどうすんの?」

「久しぶりだから緊張するし…」

 確かに…ガチガチに緊張して変に汗かいてるし。

「大丈夫だって車高も高いし運転しやすいよ」

 安心させるように声を掛けて頬にキスをした。

「はいエンジンかけてー」

 まるで教習所の先生になった気分。

 なかなか楽しそうだな!

 隣で腕を組んで待つ…ん?エンジンが掛からない…。

「麻衣?」

 隣できょとんとした顔で俺を見てる。

「エンジン…どうやって掛けるんだっけ」

 絶句。

 おいおい…本当にあれは正規の運転免許証か?

「鍵貸して?ちゃんと見てろよ?」

 助手席から腕を伸ばしてエンジンを掛けてやる。

「あぁ…そう言えばそうだったかも…」

 ボソッと呟いた言葉に不安を覚えた。

「麻衣?大丈夫?」

 俺の心配をよそに元気にVサイン。

「じゃあ…始めはゆっくりだぞ?」

 シートベルトをもう1度確認した。

 エンジン掛けるだけでアレなんだ…きっとその後はもっとすごいはず。

 しかし一向に車は動かない。

「麻衣?」

「私オートマ運転した事ない!」

 自信満々に言い切った。


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