『-one-』

元カノ現る P7:side陸


「ごめん、先店に行ってて?」

 俺は絵里を置いて麻衣を追いかけて走り出した。

 絶対なんか勘違いしてる!

 仕事だって分かってるはずなのにこんな風に逃げたりしてやっぱり麻衣おかしいよ。

「…はぁっ…麻衣!麻衣っ!待って…」

 ようやく追いついて腕を掴むと腕を振りほどこうと必死に体を捩っている。

「離して!仕事中でしょ!」

「待てって!違うんだって!」

「何が違うの?お店のお客さんじゃないって事!?」

「違う!店の客だよ!」

「だったらこんな事しないでよ」

「麻衣が急に走って逃げるからだろ?」

 そう言うとようやく大人しくなって下を向いた。

 走ったせいで乱れた髪を整えてあげる。

「麻衣?急にどうしたの?怒ってるの?」

「別に怒ってない…」

「じゃあ、昨日からのその態度は何?」

 俺と視線を合わせようとしない麻衣を安心させてあげたくて小さな手をギュッと握ってあげた。

「仕事終わったら行くから。ゆっくり話そ?」

 そう言うと黙ったまま頷いてくれて少しホッとした。

 「ちょっと、陸ー!急にどうしたのぉ?」

 麻衣の額にキスをしようと体を屈めると追いかけてきた絵里が声を掛けて来た。

 んだよっ!店行ったんじゃねーのかよ

 チッと舌打した瞬間麻衣は力いっぱい俺の手を振りほどいた。

「やだ…お店のお客さんと鉢合わせしちゃった?昨日も来てた子だよね?」

 絵里は俺に腕を絡めて麻衣の顔を覗きこんだ。

 顔を上げた麻衣は目に涙を浮かべて俺を睨みつけた。

「麻衣…違うって!」

 走って行く麻衣を追いかけられなかった。

 あんなに悲しい目をして俺を拒否していた。

 麻衣に嫌われたのかもしれない。

 あんな目で俺の事を見たのは初めてだった。

「なにあれ…。白けちゃったしお店行くの止めておくわ」

 絵里はそう言うと帰って行った。

[*前] | [次#]


コメントを書く * しおりを挟む

[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -