『いつかの夏へ』
4

「ちょ、ちょっと!真子恥ずかしいって!」

「だ、だってぇっ…ック、あい、あい…ヒック…会いたかったんだもぉん!」

 私は子供のようにしゃくり上げた。

 抑えることも出来ない私の口を雅樹が慌てて塞いだ。

「店出よう」

 雅樹は私の手を取って歩き始めた。

 私は手を引かれて後ろを着いて行く。

 斜め後ろから見える背中にまるで昔に戻ったみたいな錯角を起こした。

「どこ行くの?」

「ゆっくり話が出来るとこ」


 そして着いたのはマンションだった。

 静かなエレベーターで高層階へ上がり案内された部屋は家具がほとんどなくガランとしていた。

「まだ戻って来たばかりだから」

 部屋に入ってキョロキョロする私に説明した。

 そこは一人暮らしには贅沢なほど広い部屋だった。

 適当に座っててと言われて私は毛足の長いラグの上に座って待っていると雅樹はスーツを脱ぎラフなTシャツ姿で戻って来た。

 高校の頃は華奢だった体の線が今は少し太く見える。

「男っぽくなったね」

「まぁ…年とったしな…」

 雅樹は私の隣に腰を下ろした。

 そして会えなかった10年の歳月を埋めるようにポツリ、ポツリと話し始めた。

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