『いつかの夏へ』
4
結局話を切り出せないまま一時間があっという間に過ぎてしまった。
(早く話さなくちゃ…)
気持ちが焦る。
「あのね…わた…」
「店移動しねぇ?俺行きたい店あるんだけどさ」
せっかく決心したのに遮られてしまった。
私はガックリと肩を落とした。
「どこ行くの?」
「それは着いてからのお楽しみ〜」
ここまで来て帰るわけにも行かず私は付き合うことにした。
タクシーを掴まえててっちゃんが行き先を告げた。
二十分ほど走って着いたの最近オープンしたばかりのお洒落なバーだった。
二人でエレベーターで上がる。
「何で…ここ?」
私はてっちゃんの顔を見た。
「ば、ばかっ!変な目で見るなよ!口説こうなんて思ってねぇって!」
てっちゃんは焦ってしどろもどろになっている。
私は焦るてっちゃんを見てクスクス笑った。
「てっちゃんになら口説かれてもいいよ?」
「えっ?」
真面目な顔で聞き返されて私はベッと舌を出した。
私の顔を見てホッとした表情を浮かべた。
「どうせ自分のデートの下見とかなんでしょ〜?」
私がからかうように笑うとてっちゃんはうっさいと呟いて軽く頭を小突いた。
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