『いつかの夏へ』
3
「勉強しないの?」
さすがに気になったのか瀬戸くんが先に声を掛けてきた。
もう勉強なんかどうでもよくなっていた。
やったとしてもこの状況じゃ頭に入りそうにもない。
「あ、うん…。いいや」
「俺…邪魔?」
「ううん。そんなことないよ」
邪魔なわけがなかった。
(ドキドキしてるだけです)
告白なんて中学のバレンタインの時以外した事がなかった。
きっと好きな人とこんな風に二人きりになれたなら絶好の告白タイム何だろうと思ったけどそんな勇気はない。
ただ気まずい時間が流れる。
「ねぇ、何でずっと下見てんの?首痛くねぇの?」
「え?そうだっけ…痛くないんだけどなぁ…アハハ」
(本当は…い、痛いけど…)
そんな風に言われたら顔を上げないわけにはいかない。
私はそろそろと顔を上げるとすぐに瀬戸くんと目が合った。
ジッと私の事を真っ直ぐ見つめている。
こんなに近くで目を見たのは初めてで目が合った瞬間ハッとした。
その瞳はあまりにも力強くてずっと見つめていると吸い込まれそうになった。
ずっと視線を合わせているのはすごく気まずいのにどうしても自分から逸らす事は出来なかった。
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