『拍手小説』
も2-1

 新しくオープンしたイタリアレストラン。

 緑豊かなガーデンに面し秋の穏やかな陽光が燦々と降り注ぐサンルームのような店内。

 真新しい椅子とテーブル、イタリアらしい店内の装飾品が壁を彩っている。

 ランチタイムで混み合う店内、奥から三番目の窓際の席に座る一組のカップル。

 向かい合うようにして座る二人。

 男の方は周りからチラチラと熱い視線を送られていたが気にする風もなく目の前に座る彼女だけを見つめていた。

「まだ食べるでしょ?」

 麻衣は陸の空になった皿を見て残りのパスタを盛り付ける。

 気の利く彼女をうっとりした表情で眺めながら水を飲むと盛り付けられた皿が目の前に置かれた。

「ありがと」

「ね、結構美味しいよね。それに安いし。今度はクリーム系のパスタが食べたいなぁ…。あ、冬になったらスープパスタもいいよね?」

「そうだね。でも俺は麻衣が作ってくれるパスタが一番美味しい。この前のキャベツとアンチョビのパスタとか鶏肉のソテーしたのが乗ったやつとか」

「ありがと…。でもお店のパスタの方がすっごく美味しいよ!」

 公衆の面前でべた褒めされるのが恥ずかしいのか麻衣ははにかみながら早口で喋った。

 ナスのミートソースをフォークで巻き取ると乱暴に口に放り込んだ。

「俺は何万もするよりフレンチより麻衣が焼いてくれる玉子焼きが好き。店で飲むロマネ・コンティより麻衣と二人で飲むカフェドパリの方が美味しい」

 これ以上の甘い言葉はないかもしれない。

 言われた本人よりも隣のテーブルに座る若い女性が思わず頬を染めてしまっても誰も責められないだろう。

「陸…恥ずかしいってば」

 周りから向けられる痛い視線に逃げ出したくなりながらニコニコ顔の陸を睨んだ。

 まったく悪気のない陸は手を伸ばした。

 麻衣の口元についたミートソースを指で拭うとペロと舐めてからニッと笑った。

「これでも店の中って事で我慢してるんだけど?」

(確かに…)

 拭われた口元に手をやりながら思わず苦笑い。

 周りに誰もいなかったら間違いなく舌で舐められている光景が頭に浮かんだ。

「お待たせしました」

 甘い空気で包まれた二人のテーブルに焼きたてのピザが運ばれて来た。


end

―41―
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