『君の隣』
 第二章 P35


 何となく貴俊と顔を合わせづらかった祐二は一人で帰って来た。

 夕飯を済ませて自分の部屋に戻って来るとそのままベッドに倒れこんだ。

 "好きな人が出来たらエッチしたいって…"

 昼間聞いた日和の言葉が忘れられない。

 日和の言ってる事は分かる。

 俺だって初めて彼女が出来た時はどうやってエッチにもってくかそればっかり考えてた。

 でも俺達は男同士だし…そんな簡単には…。

 日和に押し付けられた紙袋を鞄の中から取り出した。

 グシャグシャになった紙袋を開けてこっそり中身を取り出した。

 ラブローション…。

 妙に生々しい響きに祐二の顔がほんのりと赤くなった。

「男同士には必要だって書いてあったよな…」

 こっそりと調べたサイトにそう書いてあったのを思い出した。

 準備とかやり方とか…男と女のセックスとは全然違う。

 好きだからキスしたいもちろんそれ以上だってしたいって思う。

 ただいざとなると勇気が出ない。

 この前の貴俊の指の感覚を思い出すだけでもう逃げ腰になってしまう自分がいる。

「あいつ…俺としたいって思ってんだよな?」

 あんなに余裕のない貴俊を見たのは初めてだった。

「そんなに好きって事…だよな?」

 窓から電気の点いている貴俊の部屋を見た。

 あいつはずっと俺の事が好きでたぶん俺の事抱きたいとか思ってたりしたんだよな?

 そう考えると急に愛しさみたいなものが込み上げてきた。

 我慢してるんだ。

 きっと我慢してるんだ。

 いつも俺の事バカにしたり無理矢理キスしたりするけど本当はすげぇ優しくて本当に嫌な事は絶対しないんだ。

 昔からガキん頃からずっとそうだった。

 だから…俺があん時泣いたりしたからきっとあいつは…。

 祐二は立ち上がると荷物を持って階段を駆け下りた。

「祐二ー?どうしたのー?」

「今日は貴俊ん家!」

 リビングから声を掛けた母に玄関から大きな声で返事をするとすぐに家を飛び出した。

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