『君の隣』
 第一章 P4


 まるで兄と弟だ。

 祐二が心の中でどんなに悪態を吐こうが少しでも秀でている所を必死に探そうが根底にあるものは変わらない。

 祐二は貴俊に頭が上がらない。

 別にきっかけがあったわけでも弱みを握られているわけでもない。

 幼い頃からそう思わされていた。

 何をやっても自分よりも出来る貴俊を幼い頃は本当の兄のように慕ってくっついて回っていた。

 だが成長するにつれてそれはいつしか劣等感に変わった。

 ただ祐二本人も認めたくないのだがどうしても貴俊に頭が上がらないのは覆す事も出来ない事実で…。

「俺はいいけど祐二が先生に怒られると可哀想だから」

 貴俊は祐二の頭をポンポンと叩いた。

 まるでちゃんと謝ったご褒美を貰っているみたいだ。

「べ、別に先生に怒られたってへーきだっつーの!」

 子供扱いされてるのが悔しくて貴俊の手を振り払うと大股で歩き始めた。

「そうだな。祐二はいつも怒られてるから慣れてるか」

 すぐに追いつかれて隣に並ばれる。

 日和も小走りで祐二の隣に並んだ。

「うっせぇーょ…」

 無視したフリをして誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。

「日和、新しいDVD買ったから帰り寄ってかないか?」

 貴俊が口を開いた。

「ごっめぇーん。今日はバイト入ってんの。また今度でいぃ?」

「そっか。じゃあまた今度ね」

 おいおい…ちょっと待てよ。

 なんで俺には聞かないんだよ。

「祐ぅ〜?何でふくれてるのぉ?」

「膨れてなんかねぇーって!」

「えぇー?ふくれてるよぉ!」

 日和が祐二の頬を指で突付いた。

「触んなっ!つーか男のくせに語尾伸ばすなっ!」

「祐ぅ〜機嫌悪〜い!」

 小柄な二人がじゃれている様子を貴俊は愛しい者を見るような眼差しで見つめていた。
 

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