『君の隣』
 第二章 P16


 校門の横に立ったオフホワイトのブレザーを着た長身の男、その斜め後ろには事務局の生徒が立っていた。

 そして…その前に出来た行列は学校の塀に沿って長く伸びている。

「篠田センパーイ!おはようございますっ」

「おはよう」

 爽やかな笑顔で握手を交わす。

「おはようございますっ!篠田くん…これっ」

「おはよう。こういうのは受取れないんだ、ごめんね。気持ちだけ貰ってもいいかな?」

 プレゼントをやんわりと断り爽やかな笑顔で相手はそれだけで十分と言わんばかり。

「なんだ…アイドルの握手会か?」

「あははっ!握手会って感じー!祐ってば上手い事言うねぇ〜」

「笑うんじゃねぇって!」

「もうそんなに言うなら祐も並べばいいのに〜」

「誰が並ぶかっ!!ふざけんなっ!」

 涙目になって笑う日和を睨みつけると大股で学校へと歩き始めた。

 何だよアレ!

 なんで朝からこんなバカみたいな事やってんだよ。

 だいたい貴俊もヘラヘラ女に笑ってんじゃねぇっての、しかも握手とか寒いセリフ吐いてんじゃねぇよ!

「祐ー!待ってよォー」

 早足の祐二を追うように走って駆け寄る日和にも黄色い声が掛かって余計に祐二の機嫌は悪くなる一方。

「えーッ!先輩ッ」

 女子の悲鳴のようなどよめきが起きて祐二と日和が足を止めた。

「貴ー!おっはよ!」

「おはよう。日和」

 エッ?祐二は慌てて声のする方に顔を向けると貴俊が自分達の方へ歩いて来ていた。

「祐二、おはよう」

「お、おぅ…おはよ」

 貴俊が祐二の前に立ち髪をクシャと撫でられるとくすぐったそうに顔を横に向けた。

 その様子を女子生徒がキャーキャー言いながら見ている。

「あれ?祐二…眠れなかったの?目赤いよ?」

 貴俊が屈みこんで祐二の顔を覗きこんで目尻の辺りを指で触れた。

「ばっ、ばかッ!触んなよ…。早く戻れよ、仕事なんだろ?」

 ボソボソと呟くような祐二の言葉に貴俊は耳の側で囁くと女子が待つ列へと戻って行った。

 あんのバカ…。

「ねぇー、貴は何言ったのー?」

「何でもねぇよ。早く教室行こうぜ」

 祐二の顔から不機嫌な表情はなくなっていた。

 "朝から祐二に会えないと調子が出ないよ"

 調子いい事ばっかり言いやがって…。

 横目でチラッと貴俊の方を見ると貴俊と目が合って笑顔を返された。

 ばかッ…こっち見てんじゃねぇってば。

 そう思いながらも祐二は頬が緩むのを隠せなかった。

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