君の隣

 まだ祐二に片思いをしていた頃、自分はどうしてこんなにも好きなのか考えたことがある。

 祐二が好きなんじゃなくて、自分は元々男が好きで、一番近くにいたのが祐二だったからと思ったこともある。

 試してみたくて女の子と付き合ってみたけれど、女の子相手でもちゃんと反応した。

 でも祐二を前にすると身体は自分でコントロール出来ないほど熱くなることに気が付いてしまった。

 どこが好きなのか探すことを諦めて、逆に嫌いな所を探そうとしたこともあった。

 でも、やっぱり祐二が好きだと思い知る結果になっただけだった。

 今なら分かる、祐二のどこが好きなのか、ハッキリと分かる。

「貴俊ー! 見ろよー、すげぇでけえ!!」

 アトラクションをいくつか制覇した後、お目当てのメロンパンを手に入れた祐二が笑う。

 この笑顔が好きだ。

 まるで夏の太陽を浴びて大きく開く向日葵のよう、小さい頃からこの笑顔に何度も助けられて来たんだ。

 それから真っ直ぐな所が好き、自分のように考えてから動くことはなく、自分の気持ちに正直な所が好き。

 祐二は絶対に気が付かないだろうけど、祐二は俺にとって憧れでヒーローで、それから何より大切にしたい存在だ。

「どうしたんだよ」

 メロンパンを片手に踊り出しそうだった祐二が動きを止めて不思議そうに俺を見上げている。

「どうした……って?」

「お前さ時々泣きそうな顔してる。俺みたいに単純に出来てねーのかもしんねーけど、考え込んだってしょーがねーって」

 こういう所も大好きだ。

 見ていないようで祐二が誰よりも俺のことを見ている。

 祐二をどうして好きになっちゃったとか、男同士でこの先どうなるかとか、考えたらキリがないことばかりに俺はいつだって明確な答えを欲しがっていた。

 でも分かっていることはただ一つ、大好きな笑顔をいつだって自分に向けて欲しい。

「祐二、ポップコーン食べようか」

「おう! あのキャラクターの入れ物にしようぜ!」

 首から容器をぶら下げてポップコーンを想像して、チャンスがあれば写真を撮ろうと考えていると、歩き出した祐二が俺の大好きな笑顔で振り返った。

「お前が首にかけろよー」

「え、俺?」

「澄ました顔した奴がするから面白いんだろー。写真撮って雅兄に見せてやろーっと」

 写真だけは絶対に阻止するけれど、でも祐二が俺の隣でこんな風に笑ってくれるならそれでも構わない。

 君が隣にいるだけで俺はこんなにも幸せになれる。

end

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