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『10月の拍手小説オマケ(貴×祐)』前編
満腹感と窓越しの心地良い陽射し、それに加え静かな車の揺れが瞼を重くする。
前方で繰り広げられる賑やかなお喋りも、今はまるで子守唄みたいだ。
貴俊は眠気で下りてくる瞼を何とか持ち上げるものの、本人の意志とは反対に瞼はすぐに下りてきていた。
(ああ……眠い、このまま寝ようかな。でも、せっかく祐二が隣に座ってくれているのにな)
隣に座る祐二に目をやれば、さっきと変わらない姿勢で携帯をいじっている。
視線だけを動かし携帯の画面を覗き込む、小さな画面上ではゲームのキャラクターが動いた。
最近お気に入りの携帯ゲームだということにホッとする貴俊にさらに眠気が襲い掛かる。
「眠いなら、寝ろよ」
「んー」
携帯から顔を上げた祐二に声を掛けられても、すでに曖昧な返事を返すことしか出来ない。
(でも……寝ちゃうのはもったいないんだけど……)
「着いたら起こしてやるから。寝とけって」
祐二の言葉に一瞬だけざわついた胸の奥、それもひどい眠気に負けてすぐに曖昧なものになった。
いつもの邪険な態度に慣れているせいか、その言葉の裏を読もうとしてしまう、今も素直に言葉通りには受け取れず、起きていると邪魔だからではないかと考えてしまった。
(やっぱり、寝よう……。なんか……今は色々……考えられないし)
「……から、…………か……よ」
自分では制御出来ないほど混濁した意識の中で、祐二の声を聞いたような気がしたけれど、聞き直すことも出来ないまま意識を手放した。
(なんか、あったかい……)
貴俊はゆっくりと引き上げられる意識の中で、自分の半身が温かくなっていることに気が付いた。
不自然なほど傾けた首に痛みを覚えると、おぼろげだった意識はすぐにクリアになった。
「あ……れ?」
目を開けて飛び込んできた窓の外の景色は動いていない、相変わらず暖かい陽射しが降り注いでいるが周りの車は整然と停まっていた。
「起きたんなら、頭どけろよ。重いっつーの」
「……へ?」
顔のすぐ側で聞こえて来る祐二の声に、ようやく自分の頭が祐二の肩に乗っていることに気が付いた。
「あれ、ここ……は?」
「途中のサービスエリア」
ぶっきらぼうな祐二の声を聞きながら、固まって痛む首筋を労わりながら身体を起こす。
(かなり寝てしまった)
自分の記憶にある場所から見覚えのあるサービスエリアはかなり離れていて、車が停まったことにも気が付かないほど熟睡していたらしい。
「ったく……お前のせいで折角のサービスエリアも降りられなかった!」
元々、長時間ジッとしていることが苦手な祐二は、家族で遠出の車でも学校の遠足のバスでも停まると真っ先に降りていた。
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