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『10月拍手小説のオマケ(和真&かのこ)』
まだ彼氏がいなかった頃、恋人が出来たら毎日がハッピーで、暇さえあれば携帯が気になって、ドキドキ・キラキラの毎日がやって来ると思っていた。
そして初めての彼氏が出来て、それが概ね合っているのだと知った。
そう、概ね。
初めての彼氏は7歳年上で私から見ればすごく大人、おまけに私には一生縁のないような外国の車に乗ってて、デートといえばお洒落なレストラン。
タウン誌で記念日特集とかで載るお店はほとんど連れて行って貰った。
友達に話せば誰もが羨むような私には出来すぎた彼氏なのだけれど……。
本音を言えばね。
たまには庶民?のようなデートがしたいって思うの。
贅沢だって言われればそれまでなんだけど、連休は彼氏の部屋にお泊りで、二人でDVDをたくさん借りて、コンビニでお菓子やジュースを買い込んで、眠くなるまで見て……ちょっとだけエッチなことしたりして、次の日も休みだから時間を気にせず寝坊、こういうのがしてみたい。
だから長かった夏が終わりすっかり秋らしくなった先日、絶好の行楽日和の連休を前にして彼氏に話してみたら、意外な答えが返ってきてちょっとびっくり。
「お前がそうしたいなら、別に構わない」
最初は怒ってるのかなとも思ったんだけど、そんなこともないみたいで後で苛められることもなかった。
そして明日から三連休という金曜日、夜は最近お気に入りのイタリアンで済ませて、彼のマンションへ向かう途中、DVDを数本借りてから近くのコンビニへ。
「あ、これも新作! んーどっちにしようかなぁ」
カゴの中には既にスナック菓子の袋、でも私は新発売の文字が並ぶチョコレートが陳列された棚の前。
美味しそうなチョコレートに目移りして悩んでいると横から伸びてきた手に視界を遮られた。
「悩むなら、全部買えばいいだろ」
頭の上から降ってきた少しだけ不機嫌な声、それと同時に長い指が棚に並ぶチョコレートを端から順番に持ち上げてはカゴに入れていく。
「もう……」
「金を払うのは俺だろうが」
「そうじゃなくて! 悩んで一個買うのがいいのっ!」
そしたら次は別のチョコレートを買うって楽しみが出来るというもの。
繊細な庶民心が分かってない! と言おうと思ったけれど、言ったところで意味がないことは分かっていたし、それに……そんなことで大事な時間を台無しにしたくないもの。
「次は? 飲み物か?」
頭の上からつま先まで隙のないスーツ姿でカゴを手にする彼の後ろ姿、つくづく場違いで申し訳ないなと思ってしまうけれど、でもやっぱり嬉しくて自然と足がスキップしてしまう。
ピョンピョンと跳ねながら彼の隣に並ぶと怪訝な顔をされてしまった。
「何がそんなに楽しいんだかな」
呆れたように言われたって平気。
この三連休は絶対に楽しい三連休になるはずだもん!
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