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『photographのオマケのオマケ』

 我が家にはちょっとした決まりごとがある。

 決まりごとというかイベントというか、とにかく物心ついた頃から何かあると行うこと、だからいつの間にか当たり前の行事になっている。

「ねぇ、昼飯は?」

「写真撮ってからね」

 後部座席から助手席に座る母親に声を掛けると予想通りの言葉が返ってきた。

入学式を終えて今はいつもの写真館へ向かう車の中。

 いつも通り優しい母親の横顔をぼんやり見ていた俺は視線を横へずらす、サングラスを掛け無言でハンドルを握る父親は黒いスーツを着ているせいかいつもより迫力がある。

 最近買ったばかりのこの車は、一目見れば大抵の人は分かるエンブレム付きしかもやたらデカイSUVで、そんな車をこんな奴が運転するから悪目立ちした。

 なんかもう……今日はすげぇ疲れた。

 最低6年、大学まで行けば9年。

 これから通うことになる学校だから緊張したせいもある、でも疲れた原因はそれだけじゃない。

新しいクラスメイトでどうやら友達になったらしい奴とその家族の顔、俺の学生生活は何かとんでもない事になりそうな予感がする。

「先に飯にしよーよ。腹減ったし写真なら後でも撮れるじゃん」

 家族で写真を撮るのは我が家の恒例行事、今日だって校門の前に立たされて写真を撮ったのに、わざわざ写真館まで行って記念写真を撮るらしい。

 写真好きだよなぁ、ほんと。

 リビングのサイドボードの上に並べられた写真の数々を見れば、母親と父親それに俺達の今までの成長具合なんかが一目で分かる。

 その中には俺達が知らない高校生の頃の両親や結婚式の写真、それと今から行く写真館で初めて撮ったっていうお腹の大きな母親と怖い顔の父親の写真があった。

「だめよ、時間お約束してるから」

 俺の提案はすぐに却下された。

 ムッとするけど何となくはしゃいでいる母親の声に仕方ないかと諦める。

「パパー、ちゃんとニッコリしてねー」

 隣に座る遥は相変わらず空気も読まずそんなことを言う。

 何て返事するのかちょっと気になったけど相変わらず無言のままで、その代わりに助手席の母親が身体を捻ってこっちを見て言った。

「パパはニッコリしなくてもカッコいいからいいのよ」

 そう言った母親の顔があまりに嬉しそうで、おまけに前へ向き直る時に父親を見る母親の視線がすごく幸せそうで、何だか面白くない気持ちになった。

 イライラするのはきっと腹が減ってるからだ。

 とりあえずこれから撮る写真は誰かさんみたいに無愛想な顔だけはしないでおこう。

  そう思って目を閉じた。

end



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