X ねちねち

「アレスか……」
「なるほど今回はレヴィと一緒なのか。何がそんなに不満そうなんだ?」
「いや別に」
「何こいつ!人から弄られることでしか存在を証明できないくせに!」
「何だと!」

 レヴィと話すと毎回こうなる。レヴィはXANXUSに馴れ馴れしくする私のことが気に入らない様子だ。そもそもXANXUSへの忠誠心と下心と弄られることで生きている人間だから、私のことなど興味すら持たなくて良いというのに。
 ただ、レヴィの頭はよく使えるので任務に関しては認めざるを得ない。それは相手にとってもそうなのだろう。私は優秀なのだから、それを認められないのであれば愚かだ。

「ふん、今度こそお前のその曲がった根性を叩き直してやる」
「それもう何年も言ってない?XANXUSがおねんねしてた頃は今みたいに調子乗ってなかったから5年くらいになるのかな?流石にまだ叩き直せてないのって力不足すぎません?」
「ボスを侮辱するような物言いは許さん!」
「私が侮辱しているのはボスではなくレヴィです。ちゃんと読み取りましょう」
「許さん!」

 レヴィとだと作戦会議などというものはできない。作戦について話し合うには相手の特色がよく見える。レヴィはこんなだから結局作戦会議などはできず、どうせ明日になったら無駄に多いページ数の資料が送られてくるのだ。
 それに対してスクアーロは綿密に話し合いを行う。プランをいくつか立てるしインカムで連絡も取り合う。これが一番安心して戦える。

 結局、次の日に私のスマホ宛にねちねちした資料が送りつけられて来た。ねちねちねちねち細かい指示が書いてあってめんどくさい。レヴィの実力は買うが、これは本当に面倒で読みきれない。それに嫌味のように難しい言い回しとかしてくる。私がまともな教育を受けていなかったことを知っているはずなのに。
 私はヴァリアーに入ってからまずイタリア語を一から学んだ。最低限の会話の言葉しか知らなかったからだ。次に英語、そしてイタリア語に近いヨーロッパの言語たち。ボンゴレ10代目が日本人に決まってから日本語の勉強もした。
 それでも一流大学を主席で卒業した?とかいうエリートさんが使う言葉は難しい。理解できない訳ではないが、時間がかかってしまう。レヴィはどこまでも嫌味で陰湿な奴だ。


 無事任務は終わった。レヴィの作戦に従わなかったから猛烈に文句を言われたが、結果成功したのだから良いじゃないか。きっと殺された人もあなたに殺されるより私に殺された方が幸せだったと思うよ。
 ドンピシャに作戦通り進めるスクアーロとの任務も楽しいが、勝手に作戦を立てて臨機応変にするのも楽しい。そういった緩急がある方が隊員も楽しめるのではないだろうか。隊員を楽しませるために暗殺しているわけではないが。

 私たちは暗殺集団だ。だからこそ、人手は常に足りていない状態だ。ただ喧嘩が強いだけの人が普通にファミリーに入れたとしても、暗殺部隊はそんなもんではない。暗殺できるかどうかが問題なのだ。ここまで死と隣り合わせの職場もなかなか無いだろう。何人もの部下の墓を見舞うのも私の習慣になっている程だ。
 その為、人は大切にすべきなのだ。どうせ逃げる為にヴァリアーから抜けようとする奴は殺されて終わるのだが、それでも人手を失うことに変わりはない。増えることはなかなか無くとも減ることはよくあるのだ。


 今日も敷地内の墓参りに来た。部下を死なせたのは私の責任でもあり、こいつら自身の責任でもある。私の指揮に従わず死んだ方が多い。だが、指揮に従っていた何ら力不足で死んだ者もいる。そういった奴らの墓をすこし磨いてやって花を添える。大体まともな遺体も残っていないのだから概念的な墓ではある。大きな岩に名前が刻まれていくだけのものだ。

「任務は無事に終わった。レヴィは煩いけど上手くやってくれたよ」

 それだけ墓に声をかけると屋敷に戻る。この墓を作ろうとしたのは私だ。自分の部下が生きていたことを証明したくて始めた。いつしか色んなところで死んだ人の名前も増えていくようになった。
 XANXUSの命令で屋敷の管理人に彫らせていることくらい知っている。彼はすぐ私に影響されるのだから。私にとってXANXUSは名付け親だが、赤ちゃんXANXUSにとって私も親のようなものなのかもしれない。……いや、今のは無かったことにしよう。

[ 6/26 ]

[] / []
[目次]
[しおりを挟む]




top
×
- ナノ -