\-vii 出生異聞奇譚vii 雑魚始末

「さて、お返事を伺いましょうか」

 次の日、XANXUSと共にまた昨日のアジトを訪れ、昨日と同じ相手と面会した。返事をするのと、後は手帳を返すことが目的だ。あと場合によってはここの人達を全員殺す。

「私はディオニュソスファミリーに入る気はありません」
「聞き分けの悪い娘ですね」
「私はあなたの娘ではありませんのでね」

 するとボスさんは作り笑いをやめた。その瞬間場の空気が変わったのを肌で感じる。けれどこの程度の威圧で怯む私ではない。普段誰の元で活動していると思っているのだ。

「こちらの手帳は拝見しました。お返しします」
「待て、どうしてそんな事を言うのですか。その手帳を読んだのなら分かる通り、お前は私の娘で」
「あなただってそんなことはどうでも良いのでしょう。私が本当に血の繋がった娘かどうかだなんて」
「何?」

 私はあれから冷静に考えた。この手帳の手記は間違いなく母の物だろう。理由はただの勘であるから確証は無いのだが。それでも今まで勘を頼りに生きてきた私の勘であれば信じても良いだろう。事実、本物かどうかはどうでも良いのだが。
 そしてここに書かれているヴェリタという娘は私のことであろう。名など知らされていなかったから驚いたが、なぜかすんなりと頭に馴染んだ。それでも今の私はアレスであることに変わりはない。

 何よりも不可解なのはこの男だ。母の職業柄、私の父がこのアレッシオ・ディオニュソスである証拠は無い。他人の勘は信じないから、母の勘も信じない。となると、私の父は私目線不明のままなのだ。それはアレッシオも分かっていることであろう。
 となれば私をファミリーに入れようとする理由はいくつか考えられるが、母の影を追っている事は確実。彼にとって、そこに私との血の繋がりなどは必要ない。

 結論、この手帳からは私の名前がヴェリタであった事、そして母は私を大切に思ってくれていた事以外、何の情報も得られなかったのだ。

「私は私の目的の為にヴェリタ、お前が必要なんです。力尽くでも引き入れますよ」

 そう言われたのでつい壁に立っていた下っ端にナイフを投げて殺してしまった。私はスナイパーを扱う前はナイフを扱っていた為、今でも衣服に忍ばせている。XANXUSは黙って見ている。

「私はそう軽い脅しをされるだけで1人くらい簡単に殺す。発言には気を付けろ」

 するとアレッシオは笑い出した。部下が殺されて何が愉快だと言うのだろうか。不可解な人間である。そんな人間の元に行く気など元から無かったが、益々嫌になった。

「先に手を出す方が不利だということを理解した方が良いのではないのですか?行動にはお気をつけなさい」

 有利か不利かなどどうでも良い。全員殺せば終わる事だ。私にはそれだけの力もスキルもある。今までそうやって生きてきたのだ。

「お前の足枷になっているのはボンゴレか?ヴァリアーか?それとも、そこにいる男か?まあ、全て壊してしまえば同じ事ですね」

 その言葉を聞くと私は反射的に匣に炎を流し込んだ。雲オオカミが姿を現す。

「戦力を分けろってのは本当に嘘だったんだな」
「当然です。元々ボンゴレ相手にも勝算があるので娘を返してもらう作戦に出たのですよ。ヴァリアーのボスまで来ることは誤算だったのでこちらは手薄ですが……他は違う」

 こいつの話が正しければ、少なくとも今ヴァリアーとボンゴレが攻撃されているのだろう。もしかしたら昨日の時点で始まっていたのかもしれない。
 すると下っ端達が突撃して来た為、大剣を取り出し一振りした。まるで全てが茶番のように綺麗に頭が吹っ飛んだ。まじかよこいつら。

「やはり強い。是非ともうちに欲しい」
「こんな雑魚相手じゃ私の凄さは全く伝わらないでしょうね!」

 XANXUSは相変わらず立たないどころか、私がソファを退いたお陰で横になり始めていた。こんな時まで悠長な奴だ。けれど、こんな奴らなど私だけで十分だ。私達の部下は部屋を出て他の奴らを片付け始めているようだ。とっととこの男を始末して、他の加勢に行きたい。

 アレッシオに斬りかかるとそれは巨漢の男に遮られた。こいつの名は確か、カルロ。カルロ・ディオニュソスだ。

「お互いボスは立ちたがらないんだな。代わりに俺たちが殺し合う他無いようだ」
「立ちたがらないんじゃないよ。うちのボスが一撃お見舞いしただけでこの趣味悪い建物がぶっ飛ぶからね」
「おっと、ここのデザインをしたのは俺だぜ」
「趣味悪いのね」

 大剣を構え、カルロに向き合う。今頃戦っているであろうヴァリアーの人達のことも頭の隅に置きながら。

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