\-ii 出生異聞奇譚ii 任務

「今度の任務だ。俺とアレスとで行く。部下は1人で良い」
「は、はあ」

 雑念と戦うべく部屋へと向かったのに部屋に着くとすぐにXANXUSからのお呼び出しがかかってしまった。このタイミングは最悪だな、と思いつつ彼の部屋へ行くと任務の話をされた。
 今回の任務、というのは主に交渉らしい。私は昔から殺し一筋でやって来たから交渉の場なんてものはボディガードとしてしか行ったことがない。今回もそのようなものなのだろうか。

「どうやら相手方からアレスへ指名があったらしい」
「え、私に?」

 何故わざわざ私なのだろうか。パーティーなどでも誰かと会話した記憶など無い。いちいち絡んで来る奴は面倒だから常にスクアーロの側にいた。本当はXANXUSの方が威圧になるのだろうが、残念ながらほとんどパーティーには参加しない奴なのだ。ともかく、お陰で話しかけて来る輩はいなかった。

「お前が同席していたら良いらしいが、ひとまず交渉は俺がやることにする。お前は横にいろ」
「着いて行けば良いだけなのね、分かった」

 私を指名してきた理由は本当に分からないが、それでも交渉はXANXUSがやってくれるというのなら安心だ。彼はそういうのを意外と上手くやる。常に自分のペースで話すことが出来るからだろう、とポジティブな言い方をすればそうなのだが、つまりは「お前はこっちの要望を受け入れるしかねえんだ」で押し切るだけなのである。
 話がつかなかったら最悪殺しても良いということなのであろう。XANXUSはその方法を採るから生きている相手に要望を呑ませた実績は100%だ。私も殺しなら手伝いが出来る。

「とはいえ、一体何の交渉なの?自分にふっかけられた喧嘩の意味くらい分かっとかないとね」
「交渉は喧嘩じゃねえ。制圧だ」

 制圧も違うと思いますよ、と言おうとしたが、彼にとってはほとんど同義であるのだろう。先にも述べた実績からするとそのような考えに至ってもおかしくはない。

「内容などは資料にまとめさせてる。後で送らせるからそれ見とけ」
「分かりましたー」

 説明が面倒になったのか突然投げられたが、送られて来る資料を待つ他ないようだ。XANXUSの部屋を後にし、今度こそ自室でゆっくりと休むことにした。


 ダラダラ出来る格好でベッドの上で寛ぐ。本を読んだりゲームをしたりただただスマホを弄ったりする時間は大好きだ。任務の時間はそんなに長くないものの何だかんだ1日中任務の事で追われる日々を過ごしている為、このような休息は貴重だ。
 と思っていたらスマホに資料が届いた。データを開いて内容を確認する。

「ボンゴレと対等に戦闘支援……し合う?」

 相手方の要望についてはそんなことが書かれてある。対してボンゴレとしてはまずは様子見をする事が必要だ、としている。また、ファミリーの規模が違うのに対等に支援するわけにはいかないということも書いてある。確かに相手のファミリーは聞いたこともない名前だ。そのファミリーが弱かったとして、戦闘力を流したらボンゴレまでもが弱ってしまう。相手にするだけ損だ。

「ディオニュソスファミリー……」

 ディオニュソス。確かワインや豊穣の神の名前だ。神の名前を自称するなんて、何と痴がましい連中なのだろうと思ったが、私も人の事は言えないのに気付いた。私の場合は勝手に名付けられただけなので許して頂きたい。
 代表者の名前はアレッシオ・ディオニュソスというらしい。1代目らしいから大方ファミリー名を決めて本名を改名したのだろう。資料には他の主要メンバーの名前も書いてある。

「誰のご指名か分からないけど、多分このアレッシオさんも私に交渉させたがっているんだろうな。何故……」

 全く見当がつかない。もしかして、私が普段姿を見せる時はXANXUSにくっ付いているから、それで私になら交渉術で勝てそうだと思われたのだろうか。それは腹が立つ。だが残念だったな、XANXUSが交渉するんだぞ!と頭の中でまだ見ぬ相手方に対抗心を燃やした。

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