第3話 戦闘訓練

 次の日からは普通に授業があるらしい。ガイダンスらしいガイダンスも受けていないのにさっそく始まるのか。雄英は厳しい。しかも授業は先生もいちいちプロヒーローで、それなりに緊張してしまった。
 初日の昼食はクラスの女子で食べよー!という謎の流れで、みんなで食堂に行くことになった。今まではそういうのからもハブられていたのだが、今回はなんと誘ってもらえたので憧れの皆でランチができるのだ。今までは教室の自分の席で1人で食べていたからなあ。そわそわしない方がおかしい。

「颯ちゃんの個性は何なの?」
「ボール投げ∞だったよね!」

 …颯ちゃん…!!颯ちゃん!!生まれて初めて呼ばれた!!颯ちゃん…!!!

「触った物を操る個性だよ。だからボールなんかは触ってしまえばある程度の時間好きにできるんだ」

 範囲は狭いし時間は短いんだけどね。大丈夫かな、変な言い回しとかしてないかな、と不安になる。一言一言発する度に緊張する。同年代の女の子と話したのはいつ振りなのだろうか。感慨深いものである。皆と自己紹介を済ませてしまった。これは夢なんか?皆良い子ばかりで、このランチタイムは一生の思い出になるだろう。

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」

 午後のヒーロー基礎学で担当するのはオールマイトのようだ。オールマイトが教師であることはやんわり知らされていた気がするがよく覚えていない。今日は戦闘訓練を行うようだ。事前に申請していたコスチュームに着替えさせられた。
 私が申請していたコスチュームはシンプルなものだ。とにかくジャケットのポケットや腰につけたポーチにナイフやら釘やら思いつく飛び道具を大量に忍ばせている。私がこの個性で唯一考えつき入試で使った戦い方をひとまずは使うつもりだ。
 2人組ずつでチームの振り分けが行われたが、クラスの人数が21人な為に私のBチームは3人だ。なんか白い人と腕やばい人と一緒である。まずはAチーム対Dチームのようだ。ルールは簡単、ヒーローと敵に分かれて核を捕獲/保護に努めるのだ。まあ、なんか知らんけど白い人は強そうだし腕やばい人はデカいし、多分私がポンコツでも大丈夫であろう。

 A対Dの対戦は壮絶だった。うさみみ帽子と顔怖い人は何やら因縁があるらしく、主に顔怖い人が暴れ回っていた。怖い。と同時に戦闘スキルの高さを見せつけられる。私も殴り合いならなかなか強いつもりだったが、きっと彼と個性抜きでやっても勝てないのだろう。伊達に怖い顔はしていないらしい。なんやかんやでヒーローチームが勝ち、うさみみ帽子は保健室へと連れて行かれた。
 Bチームの出番は第二戦。私は私なりに何が出来るか考えていたが、その間に白い人が全てを終わらせてしまった。

「なんじゃありゃ…」
「何も出来なかったな」

 腕がやばい彼は障子くんというそうだ。彼は少々悔しそうだが私は正直ラッキーだと思っていた。私は私のペースでしっかりヒーローになれたらそれで良い。白い彼は既にヒーローとして仕上がっていた。凄い人がいるもんだなあ。ちなみに名前は轟くんというらしい。

 放課後、手洗いに行き教室に戻ろうとした廊下で顔の怖い人とすれ違った。なにやら思いつめるものがあるらしく、目は焦点が合っていない。これはこれで怖いのだが、今の彼はそんなに怖くないように感じる。

「ジロジロ見んな」
「あ、すみません」

 そりゃ彼でなくともすれ違う人にジロジロ様子を見られたら不快になるだろう。しおらしく謝罪の言葉を口にする。

「チックソ陰キャが」
「あ?」
「は?」

 つい一瞬ガンを飛ばしてしまった。まずい、殺される。私の「あ?」なんかは可愛らしいもので彼の「は?」は本気で怖い。真面目な人間を目指しているのに、こんな怖い人に喧嘩を売る真似はしたくない。彼は一瞬足を止めたものの再び舌打ちをして去っていった。その背中は少し怖くはなかった。

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