第15話 林間合宿かあ

 結局私はクリアできなかった。色々と策を凝らして逃げたが、いちいち捕らえられた。序盤で個性を使って捕らえに来なかったから安心していたが、普通に使ってきた。めちゃくちゃ悔しい。
 そもそもこれは私の個性を皆に知らせるためのものでないの?私が個性を使って見事にゴールし、自慢げに皆に個性を教えるっていうもんじゃないの?ここまで特別扱いされておいて!

「先生嘘ついた!」
「安心しろ、お前の個性は本当だ」
「そういう問題じゃねえ!」

 皆の前に戻って来たが速攻相澤先生に詰め寄った。酷い!皆の前で恥かいた!知りたての個性なのにもっとイージーモードにしてほしかった!

「元々はロボットだけにする予定だったんだがな、色々事情が変わって」
「その変わった事情を教えろよ!」

 恐らく、ヒーロー殺しのことだろう。轟くんと緑谷くんと飯田くんがボコボコにされたというヒーロー殺し。あれの出現によって敵の活発化が予想されるんでしょ分かるけど!
 とはいえいつまでも相澤先生と茶番を繰り広げるわけにはいかない。皆がめちゃくちゃ引いてる気がする。

「じゃあ、個性の説明をしてやれ」
「あ、はい。…私の個性は空間操作です」

 軽く空間操作について説明をし、それが判明したのはここ最近であることも話した。皆は多分個性の理解はして無いけど事情は分かってくれたのではないだろうか。


「颯ちゃんとても口が悪かったわね」
「ついつい腹が立ってしまい…」
「それにしても良くわかんないけど派手な個性だったね!」
「そうなんですよ、私も分かっておらず…」
「ってか髪伸びたね、金髪出てるよ」
「リタッチを忘れていまして…」
「空間操作の個性って名字そのままだね!」
「ええ、読み方は違うのですが…」

 更衣室は私の話題で持ちきりだった。お恥ずかしい…。クリアできなかったことも、つい取り乱してしまったことも…。出来ることなら1時間前に戻りたい。いや、普通に考えてクリアは無理だったよね。皆より実力が劣る私が一人でプロヒーローに勝てるわけもなく。辛い。


「空間爆豪の次に口悪いな!」
「は、腹が立ちまして…」
「凄い個性だね、空間操作!前例もないから不明な点が多いけれど、多くの場面で活用させることができそうで、まずは戦闘よりも救助に活用できそ」
「あ、ありがとう…」
「地毛金髪なんだな!何で染めてんの?」
「高校デビュー狙いました…」
「名前が空間だから空間なのか?空間だから名前が空間なのか?」
「言ってる意味もよく分かんない」

 教室に行くと更衣室で言われたことを今度は男から言われた。勘弁してほしい…。轟くんの言った「空間だから空間」は意味が分からん。心身ヘトヘトになりながら帰宅した。

 次の日、一部の人たちが死んでいた。一部の人というのは演習試験でクリアできなかった人たちのことだ。そんなに皆合宿行きたかったん?アクティブだね。一緒に補講頑張ろうよ。予鈴が鳴り、相澤先生が登場する。

「今回の期末試験だが…残念ながら赤点が出た。したがって林間合宿は全員行きます」
「どんでんがえしだあ!」

 え!行かんといけんの!やだなあ虫嫌いなのに。でも皆嬉しそうで良かった良かった。

「筆記の方はゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤。あと瀬呂が赤点だ」
「え、私赤点じゃないんですか」
「一人でプロヒーローに勝てるわけないしな」
「甘ぁい」

 林間合宿かあ、虫除けスプレーと虫除けスプレーと、あと何が要るっけ?日焼け止め?
 その後透ちゃんがクラス全員で買い物に行くことを提案してくれる。しかし、爆豪がそれを拒否した為、私も断った。そして爆豪に連絡を入れる。休日二人で会わないか、と。返事はすぐに返ってきた。

「11時半駅前」

 あ、昼食までご一緒するやつだ。

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