深夜の誘惑 前編












「だいたいてめぇはいつも要領が悪い」













顔がいいからなんでも許してこれたけれども。
いやだってあのまつ毛にあの眼力に形のいい唇にこれまた通ったあの鼻よ、奇抜な髪色でさえ似合ってしまうあの顔の強さは神でさえ越えられないだろう、髪だけに。











「聞いてんのかチチナシ」










おっと忘れていたが現在進行形で逆巻家の問題児こと逆巻アヤトから喧嘩を吹っ掛けられている。ちなみに今回の原因としてはアヤトと作ろうとしていたたこ焼きを1人でタコパしようという深夜テンションでタコパしたばかりにタコがなくなってしまったせいである。
しかしこれは私が悪いのではなく、アヤトが起きてこなかったから。だいたい深夜起きてろよ、やるっつってたんだからよ、という気持ちを抑え「きっと彼も疲れてるよね、仕方ないよね、よし、タコパしよう」と彼の睡眠を優先した私を褒めて欲しいくらいだ。











「いや、そんなに怒らんでもいいじゃん、ていうか起きてこんかったのが悪いやんけ」
「はあ?そもそもお前が起こしてくれればこんな事にはならなかっただろうが。そもそも6人前を1人で食うやつがいるか?何考えてんだてめぇは。」









えーーーーーめっちゃ怒ってるやん
なんならチラチラ牙が見え隠れしている、生憎こちらも引く気は無い、勝敗はまあだいたいわかってるけども、こちらにもプライドがあるんでねぇ!ええ!







「いやだから、ごめんて言ってるやん、ね?あしたつくろ?ね?」
「ごめんで済めば警察要らねぇって知ってるか?」








吸血鬼が警察を語るなよ、何言ってんだこいつ
言ってやったり、みたいな顔をしてるが現在早朝6時27分








1人タコパを終えた私はビールを片手にソファにもたれ掛かり眠っていた








ところを匂いをかぎつけたこの問題児が棺桶から出てきて私を揺さぶるところから物語がスタートしたのである








たこ焼きでこんなに揉めるとは思いもしなかった
タコがないなら買ってくる、というわけにはいかないみたいで。あいにく私と彼は一応、一応恋人同士ではありますが食事問題はなかなか解決しずらいみたいである。










そもそも言い合い自体が好きではないから適当に言い分聞いてごめんねと平謝りするのがデフォルトなのだが、今日はお互い譲らない










えーーーていうか普通にチチナシとか彼女に言うセリフか?私が男なら絶対言わないぞ?そもそもお腹すいてるのはお互い様だぞ?時間通りに起きなかった自分を責めるべきでは??あれ??








無表情で頭の中で小さな分身たちと攻撃するも無表情なので相手に伝わらなければ攻撃さえもできていないのだ








「うんごめんね今から作るね」









そう告げるも納得はしてないらしく私を睨んだままでかい態度は変わらない









なんで私は毎回下手に出てるんだ?こんな顔しか取り柄のないやつに、ていうかいいところ顔しかないじゃん。なら同僚の田中の方が優しいし紳士だしたまに毒舌だが良い奴じゃないか?顔は負けるけど。てか好みの問題だけど。こんな文句ばっか言う小姑みたいな赤毛より田中の方がよくないか?いや田中ってよくある苗字だし赤毛よりインパクトはないけど絶対赤毛より田中の方が大事にしてくれるだろ、付き合ったことないけど。付き合いたいかと言われたら別にあれだけどその辺の男よりも赤毛...間違えたアヤトは彼女に対する扱いがもう終わっているから。










「てか、えーめんどくさ。じゃあもう許してくれなくていいよ、たこ焼き一緒に作ってくれる人のとこ行ってくれ」











言い終わると同時にこれは頭の中の分身との会話ではなく私自身が発した言葉だと気づく。おっと遅かった、目の前のアヤトのバックに死神が見える、なんなら「あなたのお命イタダキマス」って鎌振ってる、死ぬ、絶対零度じゃん、これもうダメなやつやん。















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