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▼ /→関興とお昼寝

小一時間程車で走って、一つ目の拠点にある湖のほとりに車を置いて休憩中。

皆が外の湖で戯れていたが、私は車のシートを倒して寛いでいた。




…ぁあ〜疲れた…。


車の中でもノリのいい音楽がいいとか、静かな音楽がいいとか、極めつけに音楽消してとか…お腹空いたとか。
まぁ、みんなマイペースでうるさかった。



目を閉じると、外からみんなの楽しそうな声が聞こえる。


ぁぁー和やかだな〜…。






「…萌…」


みんなの声に交じって聞こえた柔らかな声にふっと瞳を開けると、運転席側窓から関興が覗き込んでいた。




「どうしたの?」



「…寝てるの?」



疑問を疑問で返すマイペース君。




「ちょっと目が疲れたからね」




「…隣で寝ていい?」




「と、隣!?」




「うん」



関興は助手席を指差した。



ああ、助手席か…ビックリした。




「うん、いいよ」



私が了承すると、ゆるゆると関興が助手席に乗り込んできた。
そして、私と同じ様に器用にシートを倒して寝転んだ。


2人並んで仰向けになると、目の前に綺麗な青空が広がっている。
いや〜綺麗だ。
思えばこんなゆったりとした時間は久しぶりかもしれない。
普段みんなバラバラに遠征に行ってるから、みんながこうやって集まることもあまりないし。
本当にいい機会を頂いたのかもしれない。




「綺麗だねぇ〜…」




「…うん」



思わず出た言葉に賛同してくれた関興に視線を移すと、私を見て微笑んでいる。




「何?」




「…綺麗だと思って…」




「そうだね、きれいな空だよね」



私の言葉にふるふると首を降る関興。




え?
違うの?




「何が綺麗なの?」





「…萌…」




「はっ?」




「萌が綺麗だ…」



!?
な、何を恥ずかしいコトを言ってくれちゃってんのこの人は!
関興って、時々こういう私が恥ずかしくなるセリフ普通に言ってのけるし…冗談を言う人じゃないのがわかるから、本当毎回反応に困る。




「そ、そうかな?
…ありがと…」



笑顔で見つめられて、火照る顔を両手で覆いながら話すと、不意に関興の長い指が私の左手を掴んだ。

驚いて、関興を見るとさっきまで微笑んでいた表情が真剣な表情に変わっている。
その瞳に心を奪われていると、彼はそのまま私の指にそっと唇を寄せた。
左手に走る柔らかい感覚に思わず私の鼓動が速くなる。




「…か、関興…?」




「このまま…」




「へっ…?」




「このまま…ずっと二人で…」










「二人とも、何してるの?」


突然、私の背中で聞こえた関銀屏の声に驚いて私の身体が跳ねた。




「銀ちゃん!?」


握られていた関興の手をとっさに離そうとするが、彼はギュッと更に強い力で握りかえしてきた。


ちょ、ちょっと!
銀ちゃんがいるのにっ!




慌てふためく私と冷静な関興。


関銀屏は私達を交互に見て、やがてしっかりと握られている手に視線をおくっている。


まずい…変な勘違いするんじゃ…。



しばらくして、彼女の顔がどんどん赤くなり、小さな声で囁いた。




「…兄上様、邪魔してごめんなさい。
二人でゆっくりしてね」




「…銀屏。
ありがとう…」



赤い顔ではにかむ銀ちゃんに、優しい笑みで返す関興。

ねぇ、何をゆっくりするの?
兄妹で納得しないでよ〜!




そして、足早に走り去っていく銀ちゃん。



改めて関興に視線を移すと、何が面白かったのかクスクスと笑っている。




「…もう!何で笑ってるの?
銀ちゃんの前なのに…ビックリしたよ!」




「…ふふ。ごめん…」




「はぁ…寿命が縮まったよ…。
ところでさっき言いかけてた話は何だったの?」




私の言葉に少し間をおく関興。

何か考えにふけっているようだ。
そんなに大切な事だったのだろうか。

私がジッと見入っていると、ゆっくりと関興の口が開いた。




「…今はいい。
また今度にする…」




「…そう?
なんか気になるけど、関興がそう言うんならまた今度はなしてね?」





「うん」



そう言うと関興はまた私の左手をギュッと握った。



関興の暖かく大きな手に握りしめられていると、とても安心する。
気持ちのいい陽気と握られている手の温かさにゆっくりと睡魔が襲ってくる。



「お休み、萌」



気持ちのいい眠りに入ろうとしている私の耳に関興の優しい声が聞こえた。
そして、優しく頬を撫でる感覚。


余りの心地よさに私はそのまま意識を手放した。










無防備な愛しい人の寝顔。
思わず抱き締めて口付けをしたくなる。


さっきもつい想いを伝えそうになってしまった。


でもまだ出来ない。

彼女をしっかりと守れるようにもっと大人にならなくては。



それまではまだこのまま。

いつか一人前と認められる時がきたら、その時は愛する人に想いを伝えよう。

彼女の寝顔を見ながら、関興は改めて決心していた。

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