03/
食事の用意が終わり、私はテーブルの前に座った。
テーブルの上に並べたオードブルやケーキは1LDKの部屋に似合わず一際豪華に見えた。
時計を見ると、午前二時を回るところだった。
もう夜ご飯の時間ではないが、色々あってお腹も空いていたし、明日は仕事もない。
沢山の事が一気に起こりすぎて、まだ完全に頭の中で上手いこと解釈出来ていないが、お風呂場から聞こえてくるシャワーの音だけが現実を物語っているようだった。
今起きている現実を確かめるように物音に耳を澄ましているとガチャっと扉が開き、清正がお風呂から出てきた。
やっぱり本物だ…。
私の視線に気づいた清正は不思議そうな顔で話した。
「何か変か?
服の着方あってるか?」
元彼氏の上下スエットのジャージだったが、背の高い清正にとてもよく似合っていた。
こんなにただのジャージを着こなせる人っている?
ジャージ着ても素敵って思える彼が凄い。
「ううん。変じゃないよ。
よく似合ってる、格好いい」
「…そうか」
私が笑顔で言った素直な感想に清正は顔を赤らめて照れているようだった。
彼の新しい一面を垣間見れたようで少し嬉しかった。
「じゃ、食べよう?
どうぞ、テーブルの前に座って?」
清正は私の前にゆっくりと座った。
「いただきます〜」
私が手を合わせた後、食事に手をつけようとしているそばで清正は何か考えているようだった。
「どうしたの?」
「…いや、今日はお前の生まれた日のお祝いだろ?
おめでとう、萌」
そう言って、優しく微笑んだ清正に鼻の奥がツンとするのを感じた。
最低な誕生日だと思っていたけれど、こうして一緒にお祝いしてくれる人がいる。
単純だが、私はとても幸せ者だ。
私は目の奥が潤んでくるのをぐっとこらえた。
そんな表情の私を見て、清正は『泣くなよ?』とまた優しく笑った。
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