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 一対二と点差が開いてしまい雷門イレブンは再び逆境に立たされていた、そんな状況をただ高みの見物をしている父さんに腹を立てた円堂くんが先ほどと同じ言葉を投げつける
 俺たちの大好きなサッカーを悪いことに使うな、彼の心の奥底からの言葉も父さんには何も響かない
 モニターに映し出された父さんは戯言を言う子供を見るような優しいけれどどこか冷めた表情だった

「力とはみんなが努力して付けるものなんだ!」
「忘れたのですか? この子達もエイリア石でパワーアップしたジェニミやイプシロンと戦うことで強くなったと言うことを」

 そう、エイリア石を利用したという意味ではジェネシスも雷門も同じなのです、静かに放たれた言葉に私は苛立ちを覚えた
 父さんの言う通り確かに雷門イレブンはメンバーを入れ替えていたかもしれないがそれは弱いからではない
 入院や一時脱退を余儀なくされたのも怪我や卑怯な手を使われ仕方なくのことだ
 弱くなかったと完全に否定することはできないけれど、それは誰にだって言えること、最初は誰もが弱い
 けれど特訓を重ねみんなと心を繋げ強くなっていくのがサッカー、いえサッカーに限らず殆どのスポーツにも言えること
 円堂くんもそう思っているからこそ、決して弱くないと、入院している仲間を思い必死に弁明をする
 しかし、やはりと言うべきか今の父さんには何を言っても意味を成さない
 それがまた円堂くんの心を乱し集中力を欠如させた、ただ怒りをボールにぶつけるだけの乱暴なサッカー
 ヒロトに翻弄され続け自分のサッカーすら見失っているその姿が見ていられない
 FFをテレビで見て、今こうして雷門イレブンの一員となっているからこそ、彼がサッカーへ向けていた愛情の深さを理解していたからこそ、今彼が行っているサッカーのようなものがサッカーに対して真剣に向き合っていた彼の人生を否定しているように見えた

「円堂くん、キーパーに戻りなよ」

 君がキーパーじゃないと倒し甲斐がないよ、グランの言葉が現在雷門の1番を背負っている立向居くんの全てを否定し、直後のスパーノヴァは数人がかりでやっと防いだ

「全員でカバーしなければならないキーパー、君たちの弱点であり、敗因となる」

 ジェネシスに弄ばれ傷ついていく仲間を見て、士郎に着せられたジャージの裾を握る手は怒りで震える
 結局私は最初から最後まで何も出来ていない、愛媛や沖縄の時だって試合に出ることはなくただ試合を見ているだけだった
 そんなんで私は雷門イレブンを名乗ってもいいのだろうか、否だめだ、士郎やみんなが頑張っているというのに、これでは雷門イレブンを名乗る資格なんてない

「瞳子さん!」
「ナマエ……、わかったわ、着替えてきなさい」

「ボールを寄越せぇ!」

 円堂くんの悲痛な叫びと、ハーフタイムに入ったことを知らせるホイッスルを聞きながら私は予備のユニフォームを持ってトイレへ走った


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