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 姉さんは俺が幼稚園の時に親に捨てられた、父さんや母さんは姉なんて居なかったように振る舞い、俺を一人っ子として育てていた
 でも当時の俺も子供とはいえ一緒に暮らしてきた姉の存在を忘れるはずもなく大好きだった姉を奪われたと、ただただ悲しんだ
 姉さんがいたという証拠を探そうにも家の中には何もなかった、姉さんの存在を肯定するものは何一つ置いていなかった、きっと母さんたちが処分したのだろう
 それでも俺は必死に探した、そうしたら本棚に姉さんから貰った絵本が目に入り、中に一枚の写真が挟まっていた
 姉さんと俺が笑顔で手を握りあっている写真、姉さんが捨てられるちょっと前に家族で遊園地に行ったときのものだった
 肩まである俺と同じ赤い髪を靡かせて、綺麗に微笑んでいた

 俺はいつしか姉さんに対して姉弟以上の想いを持ってしまっていたことに気付いた

 それから数年後、両親が死んで俺はお日さま園という孤児院に入ることになった、親戚が俺を疎ましく思った末の結論
 でも結果として俺はお日さま園に入れてくれたことを感謝することになるのだが
 晴矢たちは俺を快く迎えてくれた、父さんは優しいしみんなでするサッカーも楽しかった、それに何より姉さんがいた園だった

『私は涼野風介だ』
『俺は南雲晴矢! お前は?』
『……ヒロト、基山ヒロト』
『基山だと……?』
『お前、基山ナマエって知ってっか?』
『基山、ナマエ……、姉さんだ!』

 晴矢や風介に全てを聞いた、捨てられたあと姉さんがここに入って、去年北海道に住んでいる老夫婦に引き取られたらしい、良かった、姉さんは無事なんだ

 その日以来俺は園の中にある姉さんの痕跡を探した、アルバムから思い出話まで、姉さんのことを聴く度に心が暖かくなるのを感じた

 父さんの本当の息子と娘のことを知ってからも姉さんは僕の姉さんで、父さんは僕の父さん
 ジェネシス計画が始まってから父さんは姉さんを躍起になって探していた、どうしても手元に置いておきたいらしい
 それもそうだよね、だって死んだ実の娘にそっくりで名前も同じなんだから、俺とセットで手元においておきたいよね
 俺はそれでもよかった、姉さんと一緒に父さんの元にいられるのであれば吉良ヒロトの代わりでもなんでも良かった

 アンティークな物で埋め尽くされた部屋に入り天蓋つきの可愛らしいベッドに寝かせる、この部屋は吉良ナマエの趣味だらけだ
 ベッドに眠る姉さんの顔にかかった前髪を丁寧に退ける、本当にどこかのお姫様のように綺麗だ
 ぷっくりと潤いのある唇を指で撫で、己の欲望に任せて自分の唇を重ねた


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