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 誰かの怒声で目が覚めた、うっすらと目を開けて現状を把握しようと必死に耳を傾ける
 どうやら私と士郎はあの後病院に運ばれてここは病室らしい、私と士郎が寝ているベッドを取り囲むようにみんなが集まっていて、秋ちゃんが瞳子さんに何かを訴えているようだ

「こうなることが分かっていてなぜ吹雪くんをチームに入れたんですか! それにナマエちゃんのことだって……!」

 普段からは想像できない秋ちゃんの怒号に、瞳子さんが士郎の事情をみんなに話したのだと理解した
 このままでは収拾が付かなくなってしまうのではないかと思い、私はけだるい体に鞭を打って起き上がる

「ナマエ!」
「大丈夫なのか?」
「ナマエさん……」

 無表情のまま大丈夫だと答える、感極まった木暮くんがベッドに飛び乗ってきたのでしっかりと受け止め、泣きながら私の名前を呼ぶ彼の背中をさすりながら周りを見た
 士郎のこと聞いたのね、それだけ言えば秋ちゃんが噤んでいた口を開く

「知ってたんなら何で止めなかったの? 吹雪くんのことが心配じゃないの!?」
「秋……」
「敦也を失って悲しいのは私も同じだから、士郎の中からアツヤを消すことなんて出来なかった」

 それに私はアツヤを消す権利も義務ない、ポツリと呟けば秋ちゃんが小さく謝った
 俺たちが気付けていれば、と悔やむ円堂くんにすぐさま反応する

「それは違う、気付けててもどうしようも出来なかったのよ、これは士郎の問題だから」
「っ、でも!」
「じゃあちょっときつい言い方するけど、もし、もっと早い段階で気づけてたとして、何ができた?」

 無理するなって声を掛けてた? アツヤにならなくていいって言ってた? 士郎をFWにしないでDFで使っていた?
 でも結局それら全ては同情という形で士郎に伝わり結果として士郎を苦しめることになるだけ
 自分に力がないから、だからFWじゃなくなる、もっと力もつけなくては、もっと完璧にならないとって

 私が静かに言うとみんなの顔が曇っていくのが分かる、少なからず責任を感じているのだろう
 今からどうこうしたって過去はもう取り戻せない、だから私たちはこれからどうすべきかを考えなくてはいけない

「士郎自身が完璧の意味を見出さないと意味がないの」

 それまではみんな士郎を支えるの手伝ってくれる? 優しく言えばみんなの顔の曇りが少しだけ晴れた気がした
 このとき私たちは病室から静かに姿を消した彼の存在に気付けずにいた

 次の日、風丸くんがキャラバンを降りたと告げられた


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