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▼ハガレン→進撃02

 教官は私と目を合わせるなり目を見開いた。ほんの一瞬の事だったから向こうは気付かれてないと思っているだろうが、私の方は見逃さなかった。
 まあ、見逃さなかったところで何もないのだが、教官はそのまま私から目を逸らし何事もなかったように次の者を怒鳴りつけていた。

 年端もいかぬ子供たちが兵士になろうとしている現実に軍人として溜め息を吐きたかった。かく言う私も士官学校へ入ったのは彼らくらいの時だったので強くは言えないが。
 それにしても堂々と芋を食べている子には呆れてしまった。時と場所を考えなさいと説教したい気分だ。まあ、士官学校に通いながらも女性とのデートを欠かさない男もいたが。


 初日の訓練は終了し皆一様に私服に着替え食堂に集まっていた。私の服装は白いワイシャツに、薄茶のスラックス、それと手袋。
 私個人としては、初日にしてはこんなものかと思っていたのだが他の人たちはそうではなかったようだ。
 それなりに厳しいものであったらしく、その厳しさに心が折れ自ら開拓地へと向かう者もいた。自分の体力の有り余りように呆れてしまった。
 パンとスープを受け取り適当な席へと腰を下ろし、薄味のスープを胃に収めつつ周りを見渡す。
 シガンシナ区で巨人を見たという男の子が質問責めにあっているが、私には関係ないので食事に視線を戻した。

「……!」
「?」

 がっちりとした体格をした男の子が私の正面に座り、私を見るなり驚いたような表情を見せる。教官といいこの子といい、私の顔はそんなに驚きで満ちているのか。
 確かに純血な日本人もとい東洋人はこの世界では貴重らしいが、先ほど巨人の話をしていた子と一緒にいたマフラーの女の子だって東洋人っぽい顔をしているじゃないか。

「すまない、見過ぎていたな」
「……いえ、私の方こそ初対面の相手にするような顔じゃなかったわ」

 思っていたことが顔に出ていたのか目の前の彼が目を逸らした。そんなに不機嫌な表情をしていたのだろうか。

「俺はライナー・ブラウン。ウォール・マリア南東の、山奥出身だ」
「名前・名字よ。トロスト区から来たわ」

 改めてライナーの顔を見ると既視感を感じた、が彼とは初対面のはず。それとも私が忘れているだけで訓練中に見かけたのかもしれない。
 彼は私の口からでたトロスト区という言葉に、そうか、と少し安堵した様子だった。自分から出身地域を話したのも私の出身地区を聞き出すためだと理解できたので敢えてシガンシナの名は口にしない。
 私を見て驚いたのも、トロスト区と聞いて安堵したのも、私の感じた既視感と関係があるのだろう。けれど、今はまだ聞かないことにした。いずれ分かることだ。


 パンを半分ほど残し食事を済ませる。残したパンを持って食堂を出れば洗礼中に芋を摘み食いしていた芋女ことサシャ・ブラウスが未だに走っている。
 死ぬまで走れと言われるより飯抜きと言われた方が辛そうだった、なんて会話を耳にしながら彼女が走り終えるのを待つ。


 私が残していた分のパンも彼女に渡す。

「あなたも神様ですか!?」
「……私は神様じゃないよ」

 人は神には成れない、それが世の常、世の理なのだ。なんて皮肉を心の中で呟きながらサシャがパンをかき込む姿を眺めた。

「お前ら良いことしようとしてるだろ?」

「私がしているのは人助けや偽善なんてそんな綺麗なものじゃないわ」


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