×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

▼野球少年と文学少女07

 えっと、体育が始まる前にぶつかって俺が一目惚れした彼女が慎吾に呼ばれて、慎吾は彼女を名字と呼んでいて、彼女はさっきホームランを打っていて、名字さんは文芸部で、俺は名字さんのファンであって……
 つまりそれって、俺が惚れた彼女は名字さんだったということになるわけで……
 考えれば考えるほどややこしくなってきた、俺はこんがらがる頭を抑えて唸っていると彼女が目の前まで来ていた

「何か用? 島崎くん」
「名字は今日も綺麗だねー」
「そんなことを言うためにわざわざ呼び出したの? 実にくだらないわ」

 彼女は慎吾に対して反抗的というか、慎吾を軽くあしらっている、まあ元々慎吾が軟派なのもあるけど
 そうじゃなくて、妙に上から目線といいかどうどうといているというか、そう、クールな感じだ
 まあ部活の時には慎吾からクールな子って聞いていたからそれほど驚きはしなかったが
 彼女を見つめながら色々考えていると俺の視線に気付いたのか、彼女が俺を見た

「あらあなたはさっきの、よく会うわね」
「あ、そう、ですね」
「同い年なんだから敬語はいらないわよ、面白い人」

 彼女に見つめられ、彼女に話しかけられて、とっさに敬語になってしまったらくすりと笑われた
 笑顔ではなく口角を上げただけの笑い方、見下された感のあるその顔に俺はむしろ見とれていた

「え、なに、いつの間に仲良くなったわけ?」
「あ、慎吾は知らなかったな」
「私が出席簿を取りに行ったときたまたまぶつかったの」
「あー、なるほど」

 一人置いてきぼりだった慎吾に説明をすると納得した様子
 じゃあ別に呼び出さなくてもよかったんじゃん、と慎吾が一人ごちる
 まあ慎吾に呼び出してもらうまで彼女が名字さんだって分からないままだったわけで、そこは慎吾に感謝せざるを得ない

「そういえば自己紹介がまだだったわね、名字名前よ、よろしく」
「お、俺は本山裕史、こちらこそよろしくお願いします!」

 勢い余って大きな声を出してしまった、周りにいた生徒数人には聞こえたらしくくすくすと笑われた、恥ずかしい
 横目で慎吾を見やれば誰よりも笑っていた、むかつく
 名字さんも笑っていた、先ほどのような口元だけではなく顔全体で、微笑んでいた、それが綺麗で、益々惚れた


<< 戻る >>