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▼野球少年と文学少女06

「本やん誰見てんのー?」

 俺のチームはあっさりと試合が終わってしまい暇になったので、まだ続いている女子の試合か見れる木の下でぼーっと彼女を眺めていると慎吾が近寄ってきて声をかけてきた
 慎吾にあの子のことを聞くチャンスじゃないか、そう思って口を開く
 あ、ちなみに今は彼女のチームの攻撃で彼女の打席、彼女は七番バッター

「なあ慎吾、あの子……」
「打った!」
「えっ」

 カキーン、気持ちいい音が聞こえグラウンドに目を向けると彼女が打ったであろうボールが宙を舞っている
 そしてそのまま外野の頭上を通り抜け、落ちた、つまりそれは

「慎吾、ホームラン!」
「わかったから、本やん落ち着け」

 だってあんな華奢な体からホームランがでるとは思いもよらなかったので、俺は興奮していた
 もちろん好きな子がそれをやったというのもある、きっと彼女は運動部なんだろうなと勝手に決めつける

「ほんと、本やんは好きだねぇ」
「え、何が……?」
「だから、名字のこと」
「ん?」

 俺を見ていた慎吾がため息とともに漏らした
 今の流れでどうして名字さんが出てくるんだろう、というか名字さんのことをすっかり忘れていたことを思い出す
 正確には、忘れてはいないがさっき恋をした彼女のことに夢中になっていただけで、恋は盲目ってやつだ
 彼女の試合は終わっていて、彼女のチームが勝ったみたいだ、これも彼女の活躍があったからだな

「しょうがない、本やんのために一肌脱ぎますか」
「は、え……?」

 気付いた時には慎吾が名字さんの名字を叫んでいた、俺が慌てふためいていると一人の女子がこちらに近づいてくる

 その子はなんと、さっきホームランを打った彼女だった


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