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▼瞳子妹が農大に通う02

 私の所属している農業経済学部は一年のときは農学部と同じくらい実習が入っていたが二年になると農学部より実習が少ないのだ
 その代わりに研究レポートの量が農学部の倍近くあるのでレポートが苦手な生徒はそれだけで夏休みが潰れてしまい仕舞いには単位が落ちてしまう人もいるらしい
 以上の情報は同じ学科の一年先輩である亜矢さんに去年教えてもらった
 夏休みが実習漬けという事実にうなだれている沢木くんと葉月ちゃん、遥さんは泡盛の二百年古酒の真相を知るべく先生と共に沖縄に行くそうだ
 沢木くんたちは実習先が同じ沖縄であることを知り一転、歓喜し抱き合う後輩二人が微笑ましくてにこにこしていたら葉月ちゃんが私と葵ちゃんを見た

「名前さんたちも行くんですよね? 沖縄」
「え、ああ、私は実家に帰るから行かないよ」
「私も発酵蔵の管理があるから無理」
「えーっ」

 葉月ちゃんだけではなく沢木くんや先生も意外とでも言いたげな声をあげる 遥さんも私が当然行くと思っていたのか驚いた顔をしていた
 生憎今年の夏休みはお日さま園で過ごすことが決まっているので、例え樹先生と遥さんの誘いでも今回はパスだ
 月に数えるくらいしか実家にも帰っていないからお姉ちゃんやヒロトに会いたいし、お兄ちゃんのお墓参りにも行きたい

「それじゃあ遥さんに先生、お土産期待してますね、一年たちは実習頑張れ!」

 私の長い夏休みが始まった


「さあ名前、やりましょうか」
「はい!」

 久しぶりに私とお姉ちゃんがお日さま園に揃った時は定期報告会を執り行う決まりになっている
 吉良財閥の後ろ盾があるとは言え児童養護保育施設として、支出は最低限に抑えるのがお日さま園の経営理念であり義務である
 そのため月に数回施設の現責任者であるお姉ちゃんと、立会人兼副責任者の私が揃った際に出納帳のチェックをするのが恒例となっている
 浮いたお金は子供たちのために衣服や教材費などに変わっている

 それとは別に園の子たちの進路相談と進路報告も兼ねているので一日では終わらないのだ、私に纏まった休みがあるとチャンスと言わんばかりにこの報告会は開かれる
 今年はヒロト達高校三年組と中学三年組の進路相談の日、学校で行われる三者面談ではお姉ちゃんと私が保護者として担任と話をしているので進路相談はスムーズにことが進む

 
 ヒロトは正式に養子縁組みをし今は私の義弟だ、将来はお父さんの持っている会社の内の一つを任せられることになっているので猛勉強の末、現在は国立大学への進学を目指している
 
 一つ上の治はサッカーの特待で体育大学へ、玲奈は看護学校へ進学希望など、なるべく普通の子供たちと同じよう希望の進路に進ませてあげたい
 親のいない子たちにも、親がいる子供たちと同じように教育を受けさせてあげたい、そして何より愛情を与えてあげたいという父さんの思いを大切にしている


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