▼乱馬の姉ちゃん01 ・未完で中途半端な短編です ・第1話? 目的地である天道家に到着し、上がるよう促された少女は居間に通される。彼女は天道家当主の前に礼儀正しく正座をし、持参した菓子折りを差し出した。 「これ、詰らない物ですが」 「あ、こりゃどうも。随分としっかりした子だね」 そりゃあ見た目はいたいけな幼女だが中身は高校生だ。 ・転入初日 「私ってば平和主義だから、物騒なことはちょっと……」 儚げな雰囲気を作ってそう言えば周りは頬を赤らめながらも、納得したように頷いてくれた。我ながら完璧な演技力。自慢じゃないけど女子高時代は淑女を演じすぎて憧れのマドンナと呼ばれていたのよ。 「それに、戦って勝つと言うならまずは弟に勝って頂かないと。弟よりも弱い男性に守ってもらうなんて、私ちょっと嫌です」 「名前さんって案外強かなのね」 「おいおい、姉ちゃん何言って……!」 感嘆の声を上げるあかねと、冷や汗を流す乱馬。当然、名前に交際を申し込んできた男子生徒の視線という名の殺気は乱馬に集中している。 弟の悲鳴を余所に名前は素知らぬ顔で校舎へと歩いてゆく。この騒がしさが明日からも続くのかと、内心うんざりする。 〜 ・飛龍昇天波修得編 「乱馬! そこになおれ!」 天道家でいつものように食卓を囲み夕餉を楽しんでいたときのこと。頭に沢山の瘤をこしらえた八宝斉が涙を流しながら乱馬を睨みつけたのだ。 「よーじじい。生きていたのか」 「わしの甘美な楽しみを奪った罪……万死に値する!」 そう叫ぶと八宝斉は灸を据えてやると乱馬と一悶着した末、乱馬の背中に灸を一つ据えると大人しく吹き飛ばされていった。あまりにもあっさりと撤退していく様を見た早雲と玄馬は首を傾げながらも箸を進める。 名前もささやかな怪しさを感じつつも弟の背中を一瞥するだけで、いつものように夕餉を食べ進めた。 翌朝、名前は乱馬たちより少々早いいつもの時間に天道家を出た。 昨晩のことは気がかりだったがあかねも付いているのだから大丈夫だろう。姉が出る幕は来ないことを祈りつつ校門をくぐる。 『乱馬弱くなったよ』 そんなふざけたことが書かれたチラシが大量に宙に舞っている。 手に取った名前はあまりの下らなさに思わずチラシを握りつぶす。 「こんな面白くない冗談誰が言い出したのかしらねぇ」 「名前さん顔が全然笑ってない……」 「こんな面白くないことをふれ込むクソジジイにはお灸を据えてあげなくっちゃね」 音声を消せば誰もが赤面するようなとびきりの笑顔を浮かべた美女がいるだけ。音声を消せば。 しかし真実は残酷なもので。言葉尻は優しいが内容は棘しかなく、次第に絶対零度とも言える冷気が辺りを漂い始める。 赤面していた顔を一瞬で青くし逃げてゆく男子生徒。 「姉ちゃん!」 「乱馬、可哀想に。お姉ちゃんが守ってあげるからね」 プライドの高い弟のことだ、情け無いところを姉に見られるのは好ましくないはず。ましてや子供の頃ように姉に縋ったり助けられるのというのは今の乱馬には耐えられないようだ 「俺に構わないでくれ」 「構うわよ。この世でたった二人の姉弟なんだから」 「姉ちゃん……」 「名前さん!」 「あら良牙くん。久しぶりね」 「お久しぶりです! あの、これお土産です!!」 頬を染め、手に持っていた土産品を突き出しす良牙。 「いつもありがとう。良牙くんも乱馬が心配で来てくれたのね。でもあの子はたった今右京ちゃんの所へ行ったわ」 「そ、そうなんですか! じゃ、じゃあ、あの、」 「? どうしたの?」 |