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▼ちび涼野02

「名前……!」
「やっぱり風介だ、あれ、なんでちっちゃいの?」
「名前、名前っ!」

 名前の姿を見つけた途端に決壊したダムの如く涙が止まらなかった、止め処なく零れる涙を拭っていると彼女は優しく抱いてくれた
 泣かないでー、そう背中を優しく撫でつける彼女は聖母マリアを思わせた、彼女はわたしが苦労して歩いた分と同じくらいの距離をいとも簡単に歩いてみせた
 暫くして泣きやんだわたしを抱えて家に入ったのだが、ただでさえ大きい家が今のわたしにはさらに大きく感じられた

 彼女の両親は忙しい人たちで家を空けることは日常茶飯事のことだった、なので彼女は自ずと自炊を覚え半一人暮らしの生活を余儀なくされていた
 わたしは一度だけ彼女の両親と会ったことがある、それは一ヶ月ぶりに彼女の両親が帰ってくる日で家族団らんの夕食に誘われたのだ
 わたしのような者がそんな大切な日にお邪魔してはいけないと思ってはいたが名前の輝きに満ちた笑顔を目の当たりにすればそんな考えは何処かへと消え去っていた
 そして当日、豪華な夕食の並んだ食卓にわたしはいた、彼女は隣に座ったわたしを恋人であると紹介した、それを聞いたご両親は何の戸惑いもなくわたしを受け入れてくれたのだ
 どうやら名前がわたしのことをご両親に話していたらしく彼女を幸せに出来るのはわたししかいないと考えたのだそうで、この食事会もご両親が提案したそうだ
 のんびりとした性格をしている名前のご両親は案の定のんびりとしていた、本当にこの人たちが一会社の社長であるとは信じがたいが人柄が良いのは確かだ、ちなみにわたしの父さんには名前を紹介済みだ

 ふかふかとしたソファーにわたしを降ろした名前は手に持っていたコンビニの袋からプリンを二つ取り出した

「風介プリン食べる?」
「ああ、二つも買ったのか?」
「うん、明日の分もと思って買ったんだけど風介にあげる」
「ありがとう……美味いな」
「でしょ、あのコンビニのオリジナルプリンなんだよ」
「コンビニもあなどれないな」
「うんうん」

 などと和んでいる暇はない、わたしの現状について話し合うべきなのではないだろうか、そう思いつつも夕食前のこの体は歩き詰めたせいもあってか腹が減っていたためプリンを食する手が止まらない
 腹にプリンを収めたわたしは疲労と安心感からかいつの間にか寝てしまっていた


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