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▼オリオンになぞられて02

「タイガー! 犯人から目を離さないで!」

 注意するも遅く、犯人は凍った海を走りブルーローズに近づいて行く。
 これにはオリオンスターも溜息しか出ない。


 今期もまた自宅のテレビでキングオブヒーローの発表を観るのだろうと思っていたが、ロイズに打ち上げに参加するように言われてしまう。
 そういえば来期からはメディア露出を増やしていくのだ。

 10年間ヒーロー補佐をしていたが打ち上げに参加したのは今回が初めてだ。緊張して然るべきだろう。
 ロイズもいないこの状況で名前がとれる行動は一つだけ。
 上司でありヒーローTVのプロデューサーでもあるアニエス・ルージュにひたすらくっ付いて歩くことである。
 真っ赤なドレスを身に纏ったアニエスの後ろを、同じく赤色のドレスに身を包んだオリオンスターがついて回る。

 バイザーセットを付けてはいるが、慣れない状況に慣れない衣装で緊張はマックスだ。
 おまけに周りの視線はほぼ全て彼女に注がれている。彼女がデビューしてから10年目のシーズン締め括りに際し、満を持してこういった場に姿を現したのだ、見ない方がおかしいというもの。
 豊満な胸元を強調するような衣装のせいもあるだろうが。

「(虎徹もいないし、心細い……)」

 彼女に小言を言うのも彼の仕事だ。




「オリオンスターをやってます、名前です」
「僕たち、どこかで会ったことありませんか?」
「えっ……え?」
「何? バニーってばナンパ?」
「違います! それに僕はバニーじゃなくてバーナビーです。」



「ロイズさん。あの、あまり虎徹をいじめないであげてください」
「いやいや、彼が我が儘を言うものだからね」


「名前、今日から貴女の後輩になる2人です」
「オリオンスターをやっている名字名前です。よろしくお願いします」
「同期だからと言ってタイガーを贔屓してはいけないよ。平等に接すること」

「あと名前君は職場の先輩なのだから、そこのところを肝に銘じ、くれぐれも公私混同しないように」


「オリオンスターとワイルドタイガーはヒーローとしては同期だが、会社ここではオリオンスターが先輩なのだからね。色々と弁えるように」
「」
「それと、付き合いが長いからと言ってワイルドタイガーを贔屓せず、バーナビーとも仲良くするんだよ」
「は、はい!」

 新たなシーズン開幕と共に売り出されたオリオンスターの公式ヒーローカードは飛ぶように売れ、販売初日にも関わらず売り切れる店が続出した。
 今までに撮影してきた宣材写真を使用し暦年のオリオンスターのヒーローカードを販売する会議も行われていることを本人は知らない。


「これを期にお前も他のヒーローたちと仲良くなった方がいいんじゃねぇか?」
「えっ、ど、ドユコト? 仲良く……?」
「そ、今からトレーニングルームに行ってみんなに挨拶だ!」


「トレーニングルームの通行証だってデビューした時に貰って今まで一度も使ったことないんだろ?」
「これからはメディア露出も増える事だし、体力作っていかないとだろ!」


「えっと、その……ごめんなさい!」
「おいおい何謝ってんだよ!?」
「だって……いくら会社からの指示とは言え、いつも上から目線でみんなに指示出してるから……絶対に嫌われてるもの」

「いつも的確な指示をくれて感謝しているよ。そしてありがとう!」
「うえっ!? だ、だって私は、それしか出来ることなんてなくて……む、むしろ私なんかの指示を聞いてくれて、こっちが感謝しているくらい……」

 ぶつぶつ。斉藤さんよろしく小声になってゆく名前。
 顔を伏せ小声で呟いている名前。


・みんなで牛角へ

「名前、ちゃんと食ってるか?」

 そう言って虎徹が隣を見やれば、そこには肉を頬張りながら泣いている名前の姿。
 当然それを見た全員が取り乱し、彼女を心配する。

「どうしたんだい!?」
「泣くほど美味しかったの!?」
「それとも美味くなかったか!?」
「隣が僕なのが嫌でしたか!?」
「名前大丈夫? 泣かないで」

 上からキース、カリーナ、アントニオ、イワン、パオリンである。

「ちが……違うの、ごめんなさい、大丈夫、です」

「こ、こんなにたくさんの、と、友達! と、にぎやかなに食事するのは、はじ、初めてで……!」

「何この子可愛いじゃない!!」とネイサン。
「イメージと全然違う……めっちゃいい子じゃん!」とカリーナ。






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