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▼オリオンになぞられて01

 その日、名前は呼び出されるがまま自身の勤める会社・アポロンメディアに来ていた。

 決して治安が良いとは言えない大都市・シュテルンビルドには会社に属しスポンサーを携えた正義の味方、ヒーローがいる。
 彼らは皆“NEXT”と呼ばれる異能力者で、市民の平和を守るために日夜働いているのだ。
 仕事内容は、事件が起きた際に犯罪者を捕まえ警察に引き渡したり人命救助、市民との触れ合いやチャリティへの参加など様々。
 時にはスポンサー商品や自社の事業のPRをしたりと、サラリーマンな一面も持っている。

 彼女、名字名前もまたオリオンスターという名で活躍しているヒーロー“補佐”である。

 現在彼女がいるのは自分のデスクがあるオフィスではなく、上司であるロイズの専用オフィス。
 彼はオリオンスターのマネジメントもしており、本日彼女を呼び出した理由もヒーロー事業についてだった。

「名前、呼ばれた理由は分るね?」
「はい、それとなくは……」
「ならば話は早い。我が社はヒーロー事業部を立ち上げ、本格的にヒーロー事業に参入することになったから」

 アポロンメディアには今までオリオンスターがいたが、あくまでヒーローたちの補佐、視聴率アップのためだ。
 一応司法局の認可は下りていようと、彼女はヒーロー補佐であってヒーローではない。
 そのためスポンサーを付けていなければランキングに参加してもいない。当然ポイントも入らない。
 ヒーロー事業に参入したとはお世辞にも言えない状態であったが、この度正式にヒーロー事業へ参入することを決定したのだ。

 ヒーロー事業は今後、TopMaGを買収しアポロンメディアを含めた七大企業で独占してゆくという話だった。

「それで、肝心のヒーローはどうするんですか?」

 10年もの間、ヒーロー補佐をしてきたオリオンスター。
 彼女はドラゴンキッドやブルーローズのように戦いに適した能力でなければ、己の身を守る術を持っている訳でもなかった。
 そんな、トレーニングルームにも足を踏み入れたことのないただの小娘を犯罪者と戦わせる程アポロンメディアも馬鹿じゃあない。

 それは名前自身も分かっていること。それに、今さらヒーローに成ったところで話題を呼ぶのは難しいだろう。
 となると買収したTopMaGのヒーローを起用するか、全く新たなヒーローを立てるしかない。
 前者ならば名前もよく知った人物だから安心だ。が、オリオンスター同様話題性に欠ける。
 後者ならば、話題性も申し分ないが、最悪TopMaGのヒーローが路頭に迷うこととなる。

「君は話が早くて助かるよ。新たに契約したヒーローと、買収したトップマグのヒーローとでバディを組ませることになった」

 とりあえず友人が路頭に迷う姿を見ずに済んだことにホッとする。

 バディヒーローなんてこの10年間見たことがなかったから斬新だった。
 しかも友人のヒーロースーツがより防御力の高いものにリニューアルされるそうで。これならば話題性も安全性も申し分ないと、名前は安心する。

「オリオンスターには今まで通りヒーロー補佐をしてもらうが、来シーズンからはメディアへの露出やグッズの販売を積極的にしていくから覚悟しておくように」
「は、はい!」

 数日後には今シーズンが終わり、そして新しいシーズンが始まる。
 その始まりはシーズンだけではない、何か新しいものの始まりかもしれない。


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