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▼04

・月影島及び麻生圭二関連の話

 麻生圭二のファンでピアニストを目指していたが彼の自殺(本当は他殺だった)をきっかけに当時17歳だった名前はピアニストになる夢を諦め、日本を良くするため警察を目指すようになる。
 それから丁度10年経ったある日休暇で月影島を訪れた名前は成実と出会う。村長が心臓発作で死んだ数か月後のこと。
 名前が麻生圭二のファンであることを知った成実の計らいで公民館にある麻生寄贈のピアノを見せてもらえることとなり、そこで彼の得意としていたピアノソナタ月光を弾く。
 予定通り日帰りで帰る名前を見送りに行く成実の顔は少し苦しそうだった。
 その出会いは後々まで成実の心残りとなる。



 憧れていたピアニストの故郷である月影島に

「公民館に麻生さんが寄贈したピアノが置いてありますから良かったら見ますか?」
「良いんですか?」
「ええ、もちろん」


(という話を挟んで現在、榊と麻生圭二について語り合う回)


「ベートーヴェンのピアノソナタ第14番か」
「……私が憧れていたピアニストの、一番好きだった曲です」

「もう十年以上も前に死んでしまいましたけどね」
「十年以上前……麻生圭二か」

 私の言葉に榊さんは言い淀むも確信を得たようにはっきりとその人の名を言い当てた。
 麻生さんは日本でも有数のピアニストであったし彼の余りに唐突な死を当時のマスメディアはこれでもかと、こちらがうんざりする程に報道していたのだから音楽に精通している彼が覚えていてもおかしくはない。

「その通りです。流石ですね」
「……奴とは同級生であり友人でもあった。それでなくとも指折りのピアニストだっただけに本当に残念だったよ」
「ご友人だったんですか……」

 それはお気の毒に。小さく呟いた私の声が空気に溶ける。


「学生時代に麻生が書いた楽譜があるんだが見てみるか」
「いいんですか!?」


・それからしばらくして


「毛利探偵が月影島事件を解決したと聞いてね。君だと思ったの」
「」
「麻生圭二は私の憧れであり、目標だった人よ」


「名前さんのことだったんだ……」
「……?」
「麻生成実さん」
「!」

 麻生成実といえば、私の憧れていたピアニスト麻生圭二の息子であり月影島で起こった連続殺人事件の犯人その人ではないか。
 父の死に疑問を持った彼は女性医師として月影島に赴任し父の死の真相を突き止め連続殺人を犯した末に自殺。
 事件のあらましが新聞の片隅に掲載されていたのを今でも思い出す。
 数年前休暇で月影島を訪れた際に私は彼と出会っていた。出会っていたのにも関わらず彼を救うことができなかった。

「自殺する前に成実さん言ってたんだ、“あの人にもっと早く出会えていたら何かが変わっていたのかな”って……それって多分名前さんのことだよね」


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