▼OP→T&B 01 こちらの世界に来てすぐのこと。この世界や現在いる場所について、色々と調べなければならないと思い即行動に移した。 どうやらこの世界には海軍はあれど海賊はいないようで、現在いる場所はシュテルンビルトという三層構造になっている都市。 現在いる煌びやかな最上層はゴールドステージと呼ばれているらしい。 来たと言うことはいずれ戻れるということで、今は戻る方法を考えるより今宵の宿をどうすべきか考えるべきだろう。 ベリーは持っているがあちらの世界でしか通用しない通貨で、シュテルンドルというこちらの通貨は持っていない。 「キャーッ!」 とりあえず中心街へ行こうと歩いていると女性の悲鳴が聞こえた。悲鳴の方を見やれば覆面を被った男が二人、此方に向かって走っているではないか。 野次馬を遠ざけるようナイフで牽制している彼らの手元にはじゃらじゃらと音を立てる大袋。画に描いたような宝石窃盗犯だ。 それに加えて逃走中と見た。私の目の前で犯罪を犯して逃げ切ろうなど笑止。 この都市にはヒーローと呼ばれる正義の味方がいるようだが、だからと言って私が見逃す理由にはならない。 道を開ける野次馬に紛れることなく、私は犯罪者の前に立ちはだかる。 「邪魔だどけっ!」 先頭にいた男が叫ぶが、自分から避けて行くという考えはないのだろうか。無いから犯罪を犯すのだろう、犯罪者の思考は理解しかねる。 ナイフを持っている手を掴み下に引くと同時に足を引っかけ払ってやれば、男は勢いのまま一回転し背中を地面に打ちつける。 男の手からナイフを奪いそのまま人のいない方へ投げれば少し遠い場所に植えられていた広葉樹の幹に綺麗に突き刺さる。 ほんの数秒の出来事に、周りにいる一般市民ももう一人の覆面男も呆然と、私と足元の男を見やった。 「ごほっ、かはっ、う、うぅ……」 「っ! このアマ……!」 「……」 固い地面に背中を打ち付けた男が痛みに呻くのを見て、もう一人の男が我に返る。 ナイフを持った手を大きく振りかぶり、私を狙う。しかしそんなものでビビるほどか弱い女じゃない。 振り下ろされたナイフを避け、その手を掴み男の体に背を向けるよう自分の体を潜り込ませ、そのまま踏み込む。そして男を背負い上げ投げやる。 所謂一本背負投げと呼ばれる技が綺麗に決まったところで男からナイフを奪い再び広葉樹へ投擲する。 男が動かなくなったことで野次馬から歓声が上がる。ニューヒーローなのかとの声も掛かるが、そんな大層なものではない。 「スカイハイだ!」 背後から誰から近付いてくる気配がしたので振り返れば、丁度今到着したのか銀と紫の甲冑のような衣装に身を包んだ人が宙に浮いていた。 この人がヒーローなのだろう。彼の後を追うように赤白と緑白のロボットみたいな二人組や、青いナースの少女、角の生えた緑色のロボットがやってきた。 「こりゃあどういうことだぁ!?」 声を発したのは緑白のロボット。ロボットにしては人間らしい流暢な喋り、中に人がいるのかはたまたパシフィスタのような物なのか。 よしんば彼らがロボットであっても今の私には関係のないこと。異世界から来たなど彼らに話しても笑われるのが見えている。頼るという選択肢はない。 「これは貴女がやったんですか?」 「余計なお世話でしたらすみません。職業柄、犯罪者は見逃せない質ですので」 それだけ言って踵を返す。とりあえずこの場から去らねば余計な注目を浴びてしまう、若干出遅れ感はあるが。 「……あっ、せめて名前でも教えてくれよ!」 「名乗るほどの者ではありません。通りすがりの海兵です」 |