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▼西洋ツツジと呼ばないで01

 目覚ましの音と、カーテンの隙間から漏れる朝日が、今日も私を眠りから覚ます。
 まだ寝ていたい気持ちを抑えつけベッドからのそりと起き上がる。軽く伸びをしてから深呼吸、いつもと変わらない朝だ。

「お父さんお母さん、おはよう」
「おはよう名前」
「おはよう、先に顔洗ってらっしゃい」
「はーい」

 制服に着替えて一階に下りれば食卓テーブルで新聞を読んでいるお父さんと、朝食を作り終えお弁当を詰めているお母さんが私を迎えてくれる。
 しかしそこに弟の姿はなく、朝食も減っている様子はないのでいつもの寝坊だろう。
 母の言いつけ通り洗面台で顔を洗い、寝癖の付いた髪を櫛で梳かしてからいつものようにシュシュで纏めれば完成。いつもの私の出来上がり。

 それからやっと食卓テーブルに並んだ朝食に手を付ける。今朝はレタスとベーコンエッグの乗ったパンと、牛乳。
 もそもそとサンドイッチを咀嚼しながら今日の朝練の内容を考える。私は、弟が主将をしているサッカー部のマネージャーをやっているので練習メニューを考えるのも私の仕事なのだ。
 サッカーは弟と数回やった程度であまり上手くはなく、入部したての頃はルールなんかもまったく知らなかったけど、今ではすっかりサッカーに詳しくなった。
 しかし私ももう三年生となり高校受験を控えた立派な受験生。あと半年くらいしか籍を置いていられないけれど、最後の最後までしっかりと部員のサポートをしたい。

 朝ごはんのパンに噛り付きながらテレビでニュースをチェックするのも朝の日課。
 テレビでは吉良ヒロトという、弟と同じ名前のサッカー選手が活躍している旨のニュースが流れている。
 ただ名前が弟と同じというだけなのになぜか私まで嬉しくなって、そして少しだけ鼻高々な気分だ。
 丁度私が朝食を食べ終わった頃にヒロトが慌てて階段を降りてきて朝の挨拶をする。私もそれに返事をしてからカバンを持って玄関へ向かう。

「ヒロト、早くしないと置いてくよー」
「待ってよ姉さん!」
「待たなーい」

 くすくすと笑いながら、この間買い換えたローファーを履いて玄関を出る。いってらっしゃいという両親の声に、行ってきますと私も返事をした。
 そしていつもの通学路を、なるべくゆっくり歩き始める。

 数分もしないうちに慌てた様子で家から飛び出してきたヒロト。漫画みたいにサンドイッチをくわえながら走ってくるヒロトを見て、くすりと笑う。

「ふふっ、ヒロト寝癖そのままで来たの?」
「だって、姉さんが先に行くから……」

 ヒロトは寝癖を直そうとしているが、まったく見当違いな場所を触っているので思わず笑ってしまった。
 仕方ないので私が寝癖を直してあげるとヒロトは頬を少し染め、ありがとうと微笑む。
 それにつられるように私も笑みを浮べ2人で肩を並べて登校する。

 眩しいくらいの朝日が町を照らしている良い朝だった。


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