ありかた
「ツバメ、彼のコト好きなんでしょ?告白されたんなら万々歳じゃない。そのままくっついて離さなきゃいいだけの話よ」
「……私がクラサメさんのことを好きかは保留で」
「なんでよ!」
こんな話をしていても忙しいのには変わりなく、ツッコミをしっかり入れるカルラは物資を箱に詰める手の速さを衰えさせずに話を続ける。さっきから数を間違えまくっている私とは大違いだ。流石は二つ名に商売人とつくだけのことはあるのだなあ、と手元の資料と箱の中身を照らし合わせて息をついた。私は駄目だ、また薬を入れすぎるミスをしてしまってる。
箱詰めしながらの説明はもちろん彼を思い出さなかったカルラ達に諸々を伏せてになったので、「長期治療した人に告白されてどうしたらいいか迷ってる」ぐらいの意味合いになってしまった。
大体合ってるがなんか違う。
「だって相手のことよく知らないし、」
「これから知っていけばいいじゃない。そもそもあんた達数ヵ月くっついて行動してたんだから全く知らない訳でもないでしょ?」
「……年上だし」
「ツバメは結構無理するからちょうどいいんじゃない。はい、ここの地区終わりっと」
「………。カルラ、くっ付けたがるね」
「こう言って欲しそうに見えたからね」
うふふと笑うカルラは自信に満ちていて、そうなんだろうかと自問自答して箱に頭を突っ込んだ。だめだ訳が分からない。
だって私は彼の好きだった人だというだけで、優しくされてぐらついてるだけなのだ。あれだけ一緒に居て優しくされたから、あんな風に笑うから私が近付くのを許されている気がしてしまうだけで。彼が見ているのは彼に恋していた私なんだから私自身がそんなに軽く振る舞ってはいけない。そんな、優しくされたから懐くとか犬じゃあるまいし、ねえ。
なんだか自分の思考に疲れた。
中身の最終確認を済ませて封をして、足元に控えていたトンベリに手渡した。
「……そういえばそのモンスター、0組にいたんだっけ?暫く見なかったけど」
「ああ、雪山で拾ったの」
「ちょっと待って意味分かんない」
「うん、拾ったの」
昨日の雪山での帰り、突然現れたこのトンベリと見つめあったクラサメさんを思い出す。吹雪にも係わらずしばし見つめ合い、無言でしゃがみこんだ彼にトンベリがこれまた無言で飛びかかった、包丁を投げ出して。そうして無言で抱き合う姿は私に告白した場面よりも明らかに情熱的だった、と説明するうちにも虚しくなってきてしまった。
いや、いいんだけど。こう乙女心が傷付くというか。
「私も拾われれば話早かったのにな……」
「あんたみたいな世話が掛かるの私は要らないわ」
「俺は欲しいかなー。癒されそうだし」
「エセアイドルは黙ってて」
エセアイドルことナギとともに頭を沈めて、ほらノルマがまだよ!さっさと働きなさい!とカルラに喝を入れられるままに手を動かした。話す余裕もないほどこき使われる私を見るトンベリの視線をどこか生温かく感じ、隙をみて頭を撫でてみたら包丁で刺された。
「……なあツバメ」
「………」
「懐いてねぇな……」
「……うん、そうだね……」
13.11.18
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