でこぼこ
「じゃあさぁ、みんなで円陣組もうよお」
私がここに残る旨を伝えると、教室に集まっていた皆は怒るでもなく残念がるでもなく受け入れてくれた。それどころか冒頭のジャックの提案に次々と賛同するものの手が上がり、わきあいあい、というよりはぎゅうぎゅうに皆で集まって肩を組んだ。円陣というには明らかに形が丸くないし、口々に狭いだとかしゃがめだとか腰が痛いだとか文句が絶えないから恰好がつかない。私の隣のデュースが堪えきれないように笑うものだから、つられて私も笑ってしまった。伝染するように皆で笑い、教室がバカのように騒がしい。
「あ!もぐりんさんもこちらにどうぞ」
デュースの呼びかけに、頭上を飛び回っていたもぐりんが「やっと気付いてくれたくぽおおお!」とこちらに飛び込んできた。よっぽど寂しかったらしい。あちこち飛び回って、なぜかエイトの頭に落ち着いた。
このノリならいけるだろうかと、後ろの壁に背を預けていた彼にも「よかったら、士官もこちらに」と声を掛けると、まあ、予想通りに否定の声が上がってしまったけれど。
「おいコラ、なんで知らねえヤツまで呼んでんだよ」
「だって壁にひとりじゃ寂しいでしょ」
「へえー、ふうん?」
「サイス、意味ありげな相槌やめて……!」
「んー、じゃあ武官さんはぁ、ツバメたんの後ろでいいんじゃないー?」
「なんかおかしくないかそれ」
「いや、それでいいんじゃないか?」
揉めているようで話はまとまり、彼を引っ張って無理矢理背後に立たせ、皆で肩を組んだ。
これだけ人数がいると誰が号令をすべきなのか迷って、目配せでエースに決まって皆の視線が一人に集まる。下を向いて少し考えていたエースは、皆を見回して口を開く。
「僕達はこれまでどんな任務でも成功させてきた。今回だっていつも通りに、皆でやれば成功する。またここで皆で円陣を組んで勝利を祝おう!」
「おー!」
「声小せえぞオラぁ!」
「おー!」
「もっと出せコラぁー!」
「おー!」
「そんなんじゃサボテンダーも威嚇できねえぞコラァー!」
「いつまでやるのこれ!」
彼らを見送るために玄関に向かうと憔悴したホシヒメさんが佇んでいて、回復魔法を掛けようと詠唱すると彼女自身に止められた。「その力はこの国のために使いなさい」と言われ、デュースからも手で制された。
噴水広場で、彼らが乗った龍が見えなくなるまで見送った。決意は変わらないけれど、でも、申し訳なくなって寂しい。
いつの間にいたのか隣にはナギがいて、「行っちまったなー」と場違いにのんびりした声を上げる。同じ調子で「なあ」と呼ばれて振り向くが、俯いた彼の顔は声の割には暗い。
「ごめんな。俺は、ああ言えばツバメがここに残るって知ってて言った」
「知ってる」
決めたのは私だ。それに、ここで私なんかも戦力として必要としてくれるのは嬉しいことだ。
彼らに負けてはいられないから、戦う準備をしないと。
一度思い切り伸びて、笑うナギを引っ張ってあの人が残っている0組教室に戻った。
13.09.12
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