365 | ナノ


官兵衛さんと又兵衛くん

2017/10/17 13:32

引っ越しして自分のPS3を買ったので、4年越し……?くらいに戦国BASARA4がプレイできてます!
発売日に買ったのにプレイしたことなかったんですよね!!!!!!!!
嬉しい!
嬉しいついでに、官兵衛さんと又兵衛くんの雰囲気をつかみたくてとりあえず書きました。
【現パロ】【義親子設定】【年齢操作】
戦国時代から逃れる三拍子そろってます。
あと雰囲気つかもうとしただけなので特にオチとかはないです。





「官兵衛さぁん」
まとわりつくような猫なで声と一緒に棒っきれのような腕が官兵衛の首に絡んできた。
後ろから覆いかぶさるような体勢は恋人が甘える仕草のようではあるが、この声の主にあってはそれは当てはまらない。
細腕のゆるい拘束にも関わらずいつそれが首を絞めあげるロープに変ずるかわからない緊張感がある。
それは到底甘いやりとりではなくて、官兵衛をバカにしてかかっているが故の密着なのだった。
「ね、官兵衛さんってばぁ」
静かだがどう猛に、しゅるしゅると獲物を絞め殺す準備にかかる蛇のような男だ、官兵衛のこの養い子は。
「またどうしたんだ又兵衛。お前さんが小生にこんなに甘えてくるなんて」
明日は空から鉄球でも降ってくるか、と茶化した物言いをすると、棒のように細い又兵衛の腕はたちまち官兵衛を絞めあげた。
「うるっせぇんですよォ、アンタはいちいち!」
「うぐっ、」
強く握れば折れそうな細い腕のどこからその力が出るのか、自分より一回り以上太い官兵衛の首をぎゅうぎゅう強く絞める又兵衛は顔をかっかさせている。
なまっちろい顔は紅潮するとすぐに茹ったようになって、それが官兵衛には親の欲目でかわいらしくも思えるのだが、窒息の危機とあってはそうのんきにもしていられない。
ほとんど干支一周分離れた大きな子どもの腕を軽く叩いてギブアップを訴える。
「又兵衛様が、アンタに甘えるわけがないでしょうがぁ」
腕の力がゆるゆる弱まって、じっとりといら立ちを孕んだ声が官兵衛の耳に吹き込まれる。
「思い上がりすぎなんだよぉ、このアホ官」
「小生は一言多いからな。すまん。それで、一体全体どうしたんだ?」
おざなりな謝罪ではあったが、又兵衛の怒りはそれで少しか満足を得たようで話は進む。
「養い親と最低限のコミュニケーションを取りにきてやったんですよぅ」
ピラ。
官兵衛の背に全体重を乗せるようにおっかぶさった又兵衛が、眼前に紙を出してきた。
軽い体が小刻みにユラユラと官兵衛をゆする。
早く見ろと言わんばかりだ。
「おっ、もうそんな時期だったか」
「アンタ季節感ないんだもんな。だから 詩情のひとつも理解できねぇんだ」
又兵衛はブツクサと早口で文句を言って官兵衛の背を蹴る。
この子どもは官兵衛がまだ二十を過ぎたばかりで引き取った血のつながらない息子だ。
今年で十七になる。
身長も官兵衛が引き取ったころに比べれば随分と伸びて、ひどく猫背なのを無理矢理にまっすぐにさせれば同年代の中でもかなり大きい方だろう。
身長が大きく育った分だけ、態度も人一倍大きくなってしまったが。
まぁ、大病もせず健康に育ってくれたので御の字だということにしている。
又兵衛は背丈のわりに驚くほど肉がついていない痩身だが、不思議と体調は崩さない。血のつながりはなかったが、そういうところは自分と似ていると官兵衛はよくよく思う。
ボンヤリ、息子の成長に思いを馳せていると「早くしろよぉ!」とヒステリックな声が頭を小突いた。
じめじめいじいじした男を女の腐ったようなと表現することがあるが、この生理前の女のようなイライラを年がら年中漂わせているのはなんと表すべきなのだろう。
「おお! 又兵衛、お前さんすごいじゃないか!」
官兵衛は目の前でヒラヒラヒラヒラと存在を主張する紙をようやっと見て、破顔した。
紙には飾り気のないシンプルな表が印刷されてあった。
現国、古典、数学、物理……官兵衛が遠い昔に通り過ぎた高校の授業科目名の下に数字が並んでいる表だ。
期末テストの結果である。
「お前さんは勘定も得意だが、やっぱり国語の成績がいいな」
男にしては長く揃えられた爪につままれていた紙を受け取ってしげしげ眺めながらそう言うと、背後から熱が離れていく。
キケッ、と喉の奥に油の切れた蝶番でもはまっているような独特の笑い声。
「小生には又兵衛の言うとおり詩情はわからんが、お前さんにはわかってるんだろうなぁ」
続けて言うと、ますます又兵衛が官兵衛から離れていく気配がする。
それに気が付かないふりをして点数への感想を言いながら、官兵衛は内心で目じりが下がるのが止められなかった。
照れている。
いつも生意気で天邪鬼の又兵衛が照れている。
官兵衛がちょっと育て方を間違えたこの気難しい少年は、なにしろ生まれついての天邪鬼なので、褒められてうれしいのを素直に言えない性分なのだ。
「当たり前じゃないですかぁ。この又兵衛様が、木偶共と一緒の試験で悪い点を取るわけないですからぁ」
口ではツンとしたことを言いながらも又兵衛なりに喜んでいる。
それを感じ取れることも自分に褒められて又兵衛が嬉しそうにしていることも、官兵衛にはうれしくてたまらない。
「なぁ又兵衛、今晩は小生の奢りで焼肉でも食いに行くか!」
気を良くして育ちざかり食べ盛りの息子を振り返ると、又兵衛はもうすっかりいつもの唇をとがらせたような顔に戻って「俺様、寿司の方が好きなんですけど」とそっぽを向いていた。
「何年一緒に暮らしてんですかぁ。そろそろ、……息子の好みくらい覚えたらどうなんだよぉ」
「まぁまぁ、いいじゃあないか」
官兵衛は又兵衛がやわらかいクッションを広い的に投げつけるのも気にせず、にこにこしながら冷蔵庫に成績表を貼りつけた。




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