伝え合うことの大切さ
bookmark


『明日一緒に
映画に行きませんか?
イッキさんと行きたいです!』


夕方、家に帰ってきてすぐ
声を弾ませながらマイは言った。

急用で予約していた映画に
行けなくなった友達が
チケットを譲ってくれたらしい。


特に用事もなかったし
何より、マイが僕と行きたい
って言ってくれたという事が嬉しくて
映画を見に行くことになった。


イッキ「僕っていつから
こんなに単純になったのかな…。」

『どうかしました?』


僕の呟きに気付いたマイは
そう聞いてきた。


イッキ「ううん、何でもないよ。」


そして次の日。


映画館に来た僕らは
席に座った。

もちろん二人並んで。


時計を見ると始まるまでまだ時間があった。


イッキ「でも、珍しいよね。
マイからデートに誘ってくれるなんて。」

『チケットもらったのと
イッキさん、映画なら
目が気にならないかなって思いまして。』

イッキ「ああ、なるほど…。」


少し胸が痛む。

僕はこうやって毎回
マイに気を使わせてるのか。

そう思うと、自然にため息が出た。


『イッキさん…?』

イッキ「え、ああ、気にしないで。」

『…イッキさんは
どうして隠すんですか?』

イッキ「え?」


マイのまさかの言葉に驚いた。


『今日もですけど
昨日も…いつも誤魔化します…。
私、信用ないですか?』

イッキ「そんなことないよ!
僕って情けないな…って思っただけ。」

『情けない…?』

イッキ「そう。
僕はマイの何気ない一言に喜ぶような
女々しい男になったなとか
マイに気を使わせてるな、とか。」


ああ、情けない。

そう続けて言った。


『イッキさんは情けなくなんかないです!』


僕に向かって強くそう言うマイ。


『イッキさんが私の事で喜んでくれるのは
嬉しいですし
それに私、気を使ったりしてないですよ。
デートでイッキさんを他の女の人にとられたくない
…って言う私の独占欲です…。』


最後になるにつれて
もごもごと話すマイ。


伝え合うことの大切さ


イッキ「ははっ。」

『ふふっ。』


二人で顔を見合わせて笑いあった。


prev|next

[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -