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 たどり着いた島で、セレブ達が集まるパーティが開催されていた。豪華で美味しそうなご飯に飛びついたルフィだったが、パーティの裏で人身売買しているところを目撃し、乗り込むことになった。
 そのままの恰好ではパーティに参加できないため、一度船に戻ってセレブの人が着ていそうな派手な衣装に着替える。

 ナミから渡されたドレスに腕を通し、自分の恰好を見てぎょっとした。

「このドレス、背中どころかお尻まで見えちゃいそうなんだけど!?」
「これくらい普通よ」

 ナミも露出度の高いドレスを着ているが、彼女の抜群のスタイルだ。着こなしている。

「じゃあこっちのドレスにする?」

 そう言って彼女が出したのは、前は胸だけ布で覆われているドレスで上からおへそまで露出されている。これじゃ過激な水着だ。

「こ、これ、隠せてないよ!?」
「じゃあ今着てるので良いの?」
「うん……これでいい」

 でもこのドレス、胸の横部分と肩から腰にかけてが大きく露出していて、前屈みになると横から胸が見えてしまう。両面テープとかないかな……。それに背中からお尻の上まで見えてるから下着も考えないと……。


 着替え終わり甲板に行くと、皆準備を終えていた。派手なスーツとドレスでセレブっぽい。

「渚ちゅわーん! なんて綺麗で美しいんだ!」

 サンジは鼻血を噴き出しながら倒れたので、チョッパーが慌てて血を拭きに行っていた。褒めてくれるのは嬉しいけど、露出が多くて恥ずかしい。

「お前、ケツ見えてんぞ」

 いつの間にか後ろにいたゾロは私のドレスを上に上げた。それも腰の空いたところに指を入れて、グイッと上に。勿論彼の指はお尻に触れたわけで。

「ええええっち!!!」

 私のビンタの音が響いた。デリカシーないんだから。頬に紅葉マークを付けたゾロは怒ってむっとしていた。

「ナミー、やっぱりこのドレスやだァ。ゾロにお尻触られた」
「アンタがイヤイヤ言うから他にないわよ」
「えー」

 じゃあ行くわよ、とナミが皆に声を掛けパーティ会場へと向かう。ルフィはいつものように先に行ってしまっていたが。
 皆について行きながら自分の恰好を見て溜息を吐く。こんな格好で大勢の人が集まる場所に行けるだろうか、と不安でいっぱいだ。

「諦めろ渚。ナミやロビンみたいに堂々としてた方が良いぜ」

 ウソップは私の肩に手を置いてぽんぽんと軽く叩く。彼の手は温かくて自分の露出した肩が冷えていることに気づいた。返事をしようとしたら突然横に引っ張られ「えっ」と声が出る。私もウソップも状況が読めずに首を傾げた。

「ゾロ?」
「どうしたんだ? ゾロ」
「……」

 私の腕を持ったまま黙っているゾロにもう一度声を掛けると、ハッとして彼は私から手を離した。

「わりィ。なんでもねえ」

 気まずそうに目を逸らしたゾロを見て、私とウソップはピンときた。

「ハハーン、ゾロお前もしかして」
「もう、そう言ってくれればいいのに」

 ウソップと顔を合わせてからニヤニヤ顔でゾロを見れば、彼は「何だ」と言って眉間に皺を寄せた。

「嫉妬したんだろー」
「ウソップに肩叩かれるくらい大丈……え?」
「いやいや渚。ゾロは……」
「私のことめちゃくちゃ弱いと思ってるから守ってくれたんだよね?」
「えっそうなのか?」
「だよね、ゾロ」
「知るか」

 早足で先に行ってしまったゾロを見てウソップは「この間はルフィで今回はゾロか」と笑う。彼の言う意味は分からなかったので笑って誤魔化しておいた。


 パーティ会場に着くとルフィはすぐに見つかった。人の集まるところにルフィありだ。人身売買はいつ何処で行われているのか、それを調べる為に私達は怪しげな人物を探る。
 しかし流石麦わらの一味と言っていいのか、皆自由すぎる。食事や酒を楽しむ者、女性に声を掛ける者、パーティのショーを楽しむ者。どうしたものかと呆れていると、隣から大きな溜息が聞こえた。

「あいつら、目的を忘れとらんか?」
「私も同じこと思ってた。私達だけでも頑張ろうねジンベエ!」
「そうじゃな」

 適当に歩きながら探っていると、あっちで腕相撲してるぞ見に行こうぜと何とも魅力的な会話が聞こえた。

「腕相撲……前腕筋……。ジンベエ、ちょっとだけ見てくる!」
「……」

 涎が出てきた。ジンベエが私の背中を見て呆れた顔をしていたことなんて私は知らない。
 人の集まる場所へ行くと酔っぱらった若い人達が腕相撲をして盛り上がっていた。力を入れて大きくなる前腕筋に浮き出る血管が美しい。


「美しいお嬢さん、飲み物をどうぞ」
「えっありがとうございます」

 突然知らない男性にグラスを渡され、戸惑いながら受け取る。美味しいカクテルだと飲むように勧められたので一口飲むと、甘くて飲みやすいが度数が強いお酒だと分かる。酔わせる目的で持ってきたな。それより何を入れられているか分からないのに口をつけるなんて危険だったかも。ナミに言ったら怒られそう。

「美味しいです。ありがとうございます」
「!! 君、お酒強いんだね」
「お酒好きなので」
「へえ……。部屋に美味しい酒を用意しているのだが、一緒に飲まないか?」
「ごめんなさい。連れがいるので」

 連れ込む気満々じゃないか。筋肉質でもないし生憎タイプではない。タイプだったとしても行くことはないけど。
 にやりと口角を上げた男はポケットからお札を取り出し、あろうことか私のお尻に挟んできた。驚いてお札を取ると、男は私の肩を抱いて歩き出し「金は弾むよ」と話す。どうしよう……力が強くて振り解けない。


「「オイ待てクソ野郎」」

 二つの低い声に肌がピリついた。振り返らなくても分かる怒った声色。男は二人の恐ろしさを分かっていないのか、口角を上げたまま振り返るがすぐに「ヒッ」と怯えた声を出す。それにしても二人とも近くにはいなかったはず。一体どこからやってきたのか。

「その女は高ェぞ」
「さっさとレディから汚い手ェ離せ」
「こっ、このお嬢さんの連れの方かな? ガキじゃないか」

 男は怯える様子を見せながらも意地を張っているのか二人を煽る。男の言葉に分かりやすく二人の肩が跳ねた。騒ぎを起こして会場からつまみ出されるのは困る。ここは穏便に収めなければ……。

「ガキだとしても二人とも貴方よりイイ身体してるんですよ」

 私を誘いたかったら筋肉量増やして出直してきてくださいね、なんて。
 すると男は「調子に乗るなよ!」と青筋を立てて私に殴り掛かろうとした。しまった、掛ける言葉を間違えた。
 しかし二人からの拳と蹴りで男は気絶した。守ってくれるという安心感がすごいや。騒ぎになる前に男を端の方まで引きずって寝かせておいた。

「二人とも、ありがと」

 気を取り直して調査を進めなければ、と思ってお礼を言いながら二人の顔を見ると、サンジはニヤニヤ笑っていてゾロはムスッとしていた。何とも対照的な表情だ。

「渚ちゃん。今の、エロくていいね」
「誰がガキだ」
「えへっ」

 かわいこぶっておいた。

「だから言ったじゃねェか」

 ゾロに私のお尻を指差しながら言われる。多分お尻に札を差し込まれたところを見ていたんだろうな。でも他に着るものがなかったのだから仕方がないと思う。

「これ着てて」
「ありがと」

 サンジがスーツのジャケットを肩に掛けてくれて、大きく開いた背中とお尻が隠れる。

「よし、探すぞー」
「その事なんだが、もうロビンちゃん達が見つけたみたいだぜ」
「そうなんだ! 二人は加勢しなくて大丈夫なの? 私も出来ることがあれば……」
「ウソップ達が向かったから大丈夫だと思うが、もう一人仲間がここに潜んでいるらしくってさ。酒でレディを酔わせて連れていく男らしいんだ」
「それって……」

 まだ気を失ったままの目の前にいる男の事だろうか。恐らくこの男だろうとサンジが引きずって会場の外に出した。
 会場の裏側には船があり、そこでルフィ達が戦っているのが見えた。

「売られなくて良かったな」
「うん。危なかった」
「もし気分が悪くなったら、おれに寄り添ってくれて良いからね」
「うん、ありがと。私、岩陰に隠れてるから二人とも行ってきて大丈夫だよ」

 ここなら戦闘から遠いし、私の出来ることは彼らの邪魔にならないように行動することだ。

「すぐ戻る」
「うん」
「帰ってきたら渚ちゃんからのハグが欲しいなァ!」
「考えておくね」

 二人の背中を見つめ無事であるよう祈る。岩陰に背中を預けると、ひんやりとした温度が心地良くなって段々眠くなってきた。


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「寝てるぞ」
「寝てるな」
「どう見ても寝てる」

 ルフィ、チョッパー、ウソップが岩にもたれてぐっすり眠る彼女を見て言った。麦わらの一味は人身売買の首謀者を倒して、捕まっていた人々を解放し待っている渚の元へ戻ってきた。

「ぐっすりだなァ。これだけスーパーに騒いでも起きないなんて」
「運びましょうか?」
「さっさと船戻るぞ」

 ロビンは能力を使おうとしていたが、ゾロが彼女を抱き上げようと近付くのを見て、小さく笑いながら自身の手を下ろした。

「待て、ゾロは先に行くな。ぜってェ迷子になる」
「ならねェよ!」
「眠っているプリンセスはおれが運ぶ! そしておれのあつーいキッスで目を覚ますのさァ!」
「サンジ君は荷物があるでしょ」
「ウッ……」

 奪ってきた財宝を両手いっぱいに持つサンジ。ゾロは再び彼女に近づこうとすれば、腕が伸びてきて足を止める。

「ちょっとルフィ……」

 いつものように乱暴に抱き上げるのかと思い、ナミはルフィに静止の言葉を掛けようとするが、途中で口を閉ざした。なぜならルフィは渚の事を優しく抱き上げたからだ。
 普段の行動では見られない船長の姿にクルー達は一瞬戸惑いを見せるが、すぐに笑った。

「……? なんかあちィ」
「熱か!?」
「そういや、さっきの奴らの仲間に酒渡されて飲んでたな」
「じゃあ酔っ払ってるのかもな」
「疑いもなく渡されたものに口をつけるなんて、起きたら説教ね」
「……うっ」
「ヨホホホホ。ナミさんの声が聞こえたのでしょうか。魘されていますね」

 眠る彼女を囲み、笑い声が飛び交った。