校庭の真ん中で 2 無理矢理キスを解いて、一貴を睨み上げながら抗議の言葉を口にする。 「なにす――……ン!」 だけどそれが音になったのは途中まで。オレの口は再び一貴に塞がれた。 結局オレの質問に答えないまま一貴は、濃厚なキスで芯を持ってしまったオレのを、性急な仕草で扱き始めた。 「んっ……ぁは……っ、ふ、う、ンン……!」 一貴で知って、一貴に慣らされた体は、一貴の手に無条件で反応する。 じわり、と奥から滲み出す感覚。それが一貴の手を濡らすとわかっていても、自分ではもう止められない。 ここがいくら今日は使われていないといっても、文化祭真っ只中の、学生が大勢いる校舎内であるという事実に変わりはないのに。 ひたすら絶頂へと追い立てる一貴の手の動きに、戸惑う心とは裏腹に、オレの体は抵抗を諦め、ひたすら快感だけを拾い上げていった。 「んんっ……、一、貴……、も……イ……」 「イく?」 「んっ、ダメ……」 このままだと汚してしまう。 必死で射精感をこらえながら訴えるオレに構うことなく、一貴は手の動きを早めた。 「いいよ、出して」 「やぁっ、あっ、ア―――ッ……!」 その瞬間、かっと熱くなる体。 どくんどくんと数回に分けて吐き出したオレの熱を、一貴はその手のひらですべて受け止めていた。 はあ、はあ、と荒い呼吸を整えていると、ようやく腕が解かれる。 それに安堵している暇なんてなかった。 一貴はくるりとオレを反転させると、脚の間に手をいれ、窄まりに先ほどオレが出した精液を塗りつけた。 「カズ……ッ!」 ぬちゅっ、と音を立てて入ってくる指。それが何のためなのか、頭で考えるより先に体で理解して、背筋が震えた。 まさか、ここで、最後まで――? 上か、下か。 迷ったオレは、自分たちの教室がこの階の端にあることを踏まえて、まずは逆の端まで歩いてみようと右足を踏み出した。 なんとなく、短時間でそんなには移動していないんじゃないかという、甘い考え。 だけどオレの単純な予想は、すぐに的中する。それもあまり嬉しくない形で。 「カズ……!」 渡り廊下を通って進んだ特別教室棟。すぐに見つけた見慣れた後ろ姿へいつものように呼びかけると、その向かい側に立っていたらしい女の子が、体をずらして一貴の横から顔を覗かせた。 見覚えのある、その顔。 ちら、とオレを一瞥すると、その子は今確認したはずのオレの存在をきれいに無視して、くるりと半回転して一貴の脇に並び、するりと腕を絡めた。 まるで自分の所有物であるかのように、あたりまえのように腕を取る女の子。そしてそれを避けようともしない一貴。 そこは、物心ついた頃からオレの場所だったのに。 十年経っても、二十年経っても、ずっと、そこは、オレの場所だと思っていたのに。 [戻る] |