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<初めまして、ユリと言います.>

ブログに設置されたコメント欄にゆっくりと文字を綴る。何度も書き直しながらあれこれ考えながらようやく完成した文章は、推敲したわりにたどたどしいものだった。

<初めまして、ユリと言います.えと、みなさんのお医者さんの日々がとても素敵でいつも楽しく読ませていただいております.これからも頑張ってください.>




シェアハウスに最初に帰って来たのは内科研修医のベポとシャチだった。回診後の内科医局会が思ったよりも早く終わり、外科研修医のローとペンギンよりも早く帰れたのだ。そう言えば今日は手術の助手として開胸に立ち会っていると聞いた。もしかしたらいつもよりも遅いかもしれない。

「ねぇシャチ、キャプテンたち遅いならおれたちで先にご飯作らない?」

「そうだなぁ……うーん何があるか」

Tシャツジーパンというラフな格好に着替えたシャチは、もぞもぞと着替えながら提案したベポの言葉に頷き早速冷蔵庫を開け物色し始めるが、缶ビールに酎ハイなど、アルコール類とつまみ程度しか入っていなかった冷蔵庫は早々に閉められた。医者の不養生とはよく言うが、これでは普通の人間も体調を崩すに違いない。買い出しは面倒だが仕方がない。はぁ、と溜息をついたシャチはポケットに財布と車の鍵を突っ込む。

「何食う?」

「おれ今日は鍋がいいなぁ」

「んじゃ適当に白菜とか人参、椎茸に……」

メモメモと呟きながらスマホを取り出したシャチは、ふとメッセージ通知が来ていることに気が付いた。ブログに書き込みがあった際に来るものなのだが、特に今までなかったせいか、初めてのメッセージ通知にテンションが上がる。

「ベポ、ブログにコメント来てるぞ!」

「え!?本当!?わ、本当だー初めてだね、誰だろう!?」

「まぁ待てベポ、こういうのは2人が帰って来てからみんなで見るぞ」

シャチは点滅する通知から取り敢えず目を外して玄関を出る。ベポも同じく玄関を出るとちょうど帰って来たらしいローとペンギンが車から降りているところだった。



ベポリクエストの鍋を完食後、4人はPCを開いてブログの管理画面を見ていた。先程の通知の内容を読むのと、今日のブログを書くためだった。ソファに座りPCを使うローの横で、ベポはそわそわと画面を見つめる。

「キャプテン早く!わぁ何て書いてあるのかな?」

「落ち着け、コメントは逃げねぇから」

後ろから画面を覗き込んで言うシャチだが、ベポと同じくそわそわとしている。落ち着きのない2人にペンギンは苦笑する。しかしペンギンも期待に満ちた目で画面を見ていた。

「開くぞ」

ローはそう言ってメッセージを開く。画面が切り替わりあらわれた初めてのコメント。ベポとシャチは一文字ずつ丁寧に何度も読み、ペンギンは一通り目を通すとコーヒーを入れる為にキッチンに引っ込む。ローは無言で読み終わると、少し考えてキーボードを叩いた。




ベッドの上でうつらうつらとしていたユリは、スマホの通知音で覚醒した。すでに時刻は22時をまわっており、こんな時刻に連絡をする友人や知人はユリには居ない。誰だろうと不思議に思いながら画面を開いたユリは驚いたように目を見開いた。

< :>ユリさん コメントありがとうございます.よろしければこれからも遊びに来てください. by Law >




(キャプテン酷いよ!もっといっぱいお返事しようよ!!)
(おれ返事書きたかった!!絶対女の子だぜ!?)
(先に書いたやつの勝ちだろ?)
(コーヒー入ったぞ)

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