01
ローたちがこの片田舎に来て数日。カーテンの隙間から差す朝日に覚醒したペンギンは、ゆっくりと身体を起こした。時刻は午前6時を少し過ぎたくらい。この時間だとすでにユリが朝食の準備をしている時間だった。この家に来てからというもの、今までシェアハウスでしていたような家事の任意な役割分担などはなくなり、基本的には家主であるユリがしてくれていた。が、居候の分際でそこまでしてもらうのも非常に申し訳なく、しかし頑なに家事は自分がやると譲らないユリに、手伝うという名目で一緒にすることになったのは確か先日のことだ。4人の中で1番早起きが得意なペンギンが朝食を。水仕事の好きなベポが洗濯や洗い物を。昼食や雑事をシャチが。そして、夕食をローが。着替え終わったペンギンは、そのまま顔を洗いに一度洗面所へ赴き、それから台所へと向かった。





朝、1番最後に起きるローは無意識にベッドを弄りそして溜息をついた。未だに研修医時代の癖が抜けていないせいか、はたまたユリとひとつ屋根の下で暮らしている状況で何もなく欲求が溜まっているせいか、一度も夜をともにしたことなどないはずなのに、何故か目が覚めるとユリが隣で寝ている錯覚を覚える。ぼんやりとする頭を振り時計を見れば、時刻は7時を回った頃だった。そろそろユリとペンギンが朝食を作り終えているところだろう。今日は依然ユリの両親がやっていた病院の中を見せてもらうことになっている。使われなくなって十数年以上経つ病院内で使用できるもの、使用できないもの仕分けをしようということだ。必要な器具はドフラミンゴの秘書モネが手配してくれることとなっており、何故か連絡係と目付け役ということで週一ここに来ることになっているベビー5にそれを伝えるまでが今日の仕事だ。まだまだ開業には程遠いものの、臨時でユリの家の居間で行っている診療もなかなかに評判が良いので、着実に実現に近づいている実感はあった。
その時、控えめなノックオンが聞こえた。顔を見ずともわかるその相手にローはほんの少しだけ笑みを浮かべドアを開けると、ドアノブの握ったままだった相手をそのまま腕の中に閉じ込めた。

「ユリ、夜這いはもう少し早く来てくれ」

「おはよう、ございます?……あの、ローさん朝食が、えと?」

ローの発言と自身の状態、その両方に首を傾げるユリ。今まで関係を持った女なら、このままローにその豊満な肢体をくっつけ、ベッドへ直行するのだが、生憎ユリはローの腕の中にいる状態で混乱しイマイチローの発言が理解できなかったらしい。頬を染めたまま、取り敢えずここへ来た目的を告げたユリにローは微笑し、そのままユリにそっと口付けた。

「んっ……ローさん」

「今日の朝食はユリか?」

「えと、ローさんの好きな焼き海苔おむすびに、鮭の切り身とお味噌汁、それから……」

ローの際どい発言も華麗に躱し告げるユリにローはククッと笑った。そう、ユリにはこんな回りくどい言い方じゃ伝わらないんだ。画面の向こうにいた頃の方がもっとストレートに言えたはずなのに。いざユリ本人を目の前にするとなかなか素直に口にできない自分にロー自身が一番驚いていた。この自分が未だに口づけ以上できないとは。

「……それだけ本気ってことか……」

「ふぇ、どうかしましたか?」

ローの呟きはユリには聞こえなかったらしい。聞き返したユリに何でもないと告げたローは、再びユリに口付けた。




(味噌汁冷めたな……)
(温め直せばいいだろう……)
(今度からユリ以外が行こうよ)
(馬鹿お前!ユリじゃねえとキャプテンを平穏に起こせねぇだろうが!!)
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