▼ 急募:主人の取扱説明書
俺の主人は頭が沸いている。
「きゃわわわわ!あーもう!ほんと!可愛いでちゅねぇ!このモフモフ!憎い!」
可愛いという形容詞はそれ相応の相手に言うものだ、例えば主人の友人が持っているアチャモとか。余談ではあるが、あのアチャモは自分のことを賢いと思っているらしい。可哀想に、叶いもしない夢をみては絵本を眺めている赤ん坊。はやく真実を教えてやらないトレーナーもトレーナーだと思うがな。
「アブソルー?どしたの、何故そっぽを向くの?‥‥はぅん爪が刺さってるよぅ」
性懲りも無く首元に顔を埋めようとしてくる主人。その顔をぐぐぐ、と押しやって避難。
「いけずー」
態々部屋の隅で足を抱えて座った主人は呆れるくらいに阿呆である。仕方がないので相手をしてやろう。いつだって折れるのはこちらなのだ。
主人の姉が育てているエネコ用のポケじゃらしをポイと投げてやる。「アブソルたんがオレと遊ぼうとしてくれているー!?」なんてポケじゃらしに飛びついた主人。これではどちらがポケモンだか分かったものじゃない。
「ほらほら〜アブソル〜!」
ぶんぶんとポケじゃらしを振り回す主人。
阿呆め、それで一人遊びをしていろという意味だ。
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