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キラキラと習性

レオが仕事の報告書に不備がないかを何度も何度も確認して、恐る恐る氷の上司にそれを提出したのはつい先程のこと。
ほんの少しやつれた様子で(しかしあのイケメンフェイスが崩れる事はなく)対応してくれた彼は、そそくさと執務室を退室する際に「ああ、レオ、頼み事をしていいだろうか」と彼を呼び止めた。

「なんですか?」
「シキがな、うずうずしてて」
「‥‥う、うずうず?」
「そう。今日、シキと散歩に行く約束をしていたんだが‥‥生憎と僕はこんな状態だから、レオ、君にシキの付き添いを頼みたいんだ」
「全然構いませんけど‥‥」
「行き先はあいつの行くままに、ただついていけばいいから」

じゃ、頼んだよ。
そう言ってデスクに目を落としたスティーブンは話は終わったとばかりに、その体勢から動かなくなった。

スティーブンの代わりが務まるだろうか。レオは少々不安になりつつ、シキがいるであろう、彼女の仕事部屋へ足を向ける。そんなレオの気持ちを感じてか、肩に乗るソニックがぺちりと頬に手を当ててきたのだった。



×××



「ウォッチーくん!こっち!」
「はい!(‥‥この方向は‥)」

あの後、やはり仕事部屋でスティーブンを待っていたシキにレオは事情を話し、一緒に事務所を出た。
意気揚々と歩く彼女の後について歩いて、そろそろ10分といったところだろうか。このまま行くと大きな公園に出たはずだ。
そこで何か、イベント事があるのだろうかと考えたが、まあこの街は毎日がデンジャラスなイベントかと独りごちる。

駆け出したシキを見失わないように走って追いかけていると、見慣れた公園に辿り着いた。
ぴょん、とレオの肩からシキの肩へと飛び移ったソニックを受け止めたシキは、地面に視線を向けて黙々と歩き出す。何かを探しているようにも見えるその様子にレオは首を傾げつつ、しかし“行き先はシキの行くままに”なので、黙って後ろに続いた。

公園の真ん中辺りまで来た時、シキが歓声をあげて走り出した。

「ふぉぉおおお!!」
「うぇっ!?シキさん!?」

芝生の上でしゃがみこんで、シキは何かを拾っている。キラリと光ったそれは、小さなガラス片だ。おそらくビンか何かのものだろう。
一頻りガラス片を様々な角度で見つめたシキはそれをポシェットに入れると、立ち上がってまた走り出す。

「うへへへ‥‥」
「(凄い笑い方になってる‥‥)」

立ち上がって、走って、しゃがんで、にやけて。
それを繰り返している内に、いつの間にやら公園の端まで来てしまっていた。その間に、段々と笑い方が怪しげになっていったシキは満足げに鼻を鳴らしてレオに振り返る。

「だいしゅうかくなのだ!」
「ガラスを集めていたんですか?」
「キラキラあつめ!」
「‥‥キラキラ、ですか」

ほら!と差し出されたのは行きよりも膨らんだポシェットで。覗き込んで見れば、なるほど確かに大収穫である。

「なんで“キラキラ集め”を?」と声にしそうになったレオは、ハッと気がついて口を噤んだ。そうだ、猫のイメージが強いが、シキにはもう一つの生き物の要素があった。

「(“烏”天狗の影響なのかな‥‥?)」

トロンとした目でガラス片を見つめるシキ。その肩ではソニックがポシェットの中から一つガラス片を取り出して、首を傾けている。その顔は「コレはそんなに価値があるものなの?」と言っているようだ。

対照的な様子に、レオはくすりと笑みを零した。



×××



事務所に帰ったシキは、ポシェットの中身をとある缶の中へと入れていた。
レオとソニックがそっとその中を覗き込めば、今まで貯めてきたのだろうガラス片やビー玉といったキラキラとしたもので一杯で。
重量が増した缶をとても嬉しそうにスティーブンに見せるシキ姿を見て、一人と一匹は顔を見合わせて表情を緩めるのであった。

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